東京・丸の内仲通りで7月24日からスタートした「MARUNOUCHI SUMMER FEST 2026」。街全体を舞台に約100の体験型コンテンツを展開する新たな夏のイベントです。50社を超える企業が参画し、子ども向け職業体験やワークショップ、ストリートイベントなどを通して、「働く人が街をもっと好きになる」ことを目指すものです。
その背景にあるのが、三菱地所が推進する「まちまるごとワークプレイス構想」。オフィスの枠を超え、街そのものを働く人や企業、家族をつなぐプラットフォームへと進化させようという挑戦です。ここでは、メディア向け説明会に加え、スターバックス コーヒー ジャパンによる「サステナブルキッズバリスタ体験」、ブルックス ブラザーズによるアップサイクルワークショップを取材し、その取り組みをレポートするとともに、「MARUNOUCHI SUMMER FEST 2026」の会場の様子などもお届けします。
「MARUNOUCHI SUMMER FEST 2026」は、単なる季節イベントではありません。街づくりのビジョンを体現する実証の場として企画されたイベントです。メディア向け説明会では、三菱地所 エリアマネジメント事業部長の長谷川真氏とリガーレ事務局長の大谷典之氏が、近年の働き方の変化を背景に、「オフィスだけでは実現できない価値を、街全体で提供することが重要になっている」と説明しました。


リモートワークの普及や働き方の多様化により、企業にはウェルビーイングやコミュニティ形成、チームビルディングなど、新たな役割が求められています。一方で、それらを一企業だけで担うには、コストやスペースなどの面で限界があります。そこで丸の内エリア全体を一つのプラットフォームとして活用し、企業同士が連携しながら働く人の体験価値を高める「まちまるごとワークプレイス構想」が推進されています。
その具体策の一つが、今年3月に始動した会員制サービス「MARUNOUCHI WORKERS」。就業者向けの特典や交流機会を提供し、「この街で働く価値」を高める取り組みが進められています。そして、その世界観を街全体で体感できるイベントとして誕生したのが「MARUNOUCHI SUMMER FEST 2026」です。

説明会会場では、就業者向けサービス「MARUNOUCHI WORKERS」の会員限定で各日先着30名に提供されるブルーシトラスソーダの試飲も。柑橘の爽やかさと夏らしい色味に暑さが吹き飛びます。
「MARUNOUCHI SUMMER FEST 2026」のなかでも、特に大きな反響を集めたのが「Marunouchi Summer Workshop」です。丸の内エリアに集積する多彩な企業や店舗が連携し、普段はなかなか見ることのできない仕事の現場や、プロの技術に触れられる体験型プログラムを展開。限られた募集枠に対して約11,700件もの応募が寄せられ、全体の応募倍率は約8.3倍を記録しました。
飲食やファッションだけでなく、ホテル、医療、金融、メディアなど、参加企業の業種も実にさまざま。企業がそれぞれの専門性を生かしながら、仕事の魅力やその背景にある考え方を子どもたちに伝えます。単に「職業を疑似体験する」だけではなく、実際の店舗や仕事の現場でプロから直接学べることも、丸の内ならではの特徴です。
説明会後に取材したのは、スターバックス コーヒー ジャパンによる「サステナブルキッズバリスタ体験」と、ブルックス ブラザーズによるアップサイクルワークショップの2つです。
スターバックスのプログラムでは、子どもたちが本物の緑のエプロンに身を包み、バリスタになりきってコーヒーの抽出などに挑戦。店舗で働くパートナーに直接教わりながら、一杯のコーヒーができあがるまでの工程を学んでいきます。真剣な表情で話を聞き、実際に手を動かす子どもたちの姿が印象的でした。大人と同じデザインのミニサイズのエプロン姿も、とてもかわいらしく、自然と仕事への興味を引き出しているようでした。


一方、ブルックス ブラザーズでは「Upcycle Collage Lab in Brooks Brothers Marunouchi」と題し、スーツやシャツの製造過程で生まれた生地の端切れを再利用して、世界にひとつだけのオリジナル作品「エコ・コラージュ」を制作するワークショップを開催しました。
色も柄も質感も異なるさまざまな生地を前に、子どもたちは組み合わせを考えながら思い思いの作品づくりに夢中。ファッションやものづくりの楽しさに触れると同時に、本来なら使われずに終わってしまう素材に新たな価値を与える「アップサイクル」を、体験を通じて知る機会にもなっています。


こうしたワークショップの魅力は、子どもたちにとっての学びだけにとどまりません。丸の内で働く人にとっても、普段仕事をしている街を家族と訪れ、企業や店舗との新たな接点を持つきっかけになります。「働く場所」だった街が、親子で学び、遊び、新しい発見をする場所になる。多様な企業・店舗が集まる丸の内だからこそ実現できる体験を通して、街そのものへの愛着を育んでいくことも、「Marunouchi Summer Workshop」が目指すものの一つです。
丸の内仲通りを歩くと、まず目を引くのが、通り全体を彩る華やかな装飾です。仲通りのフラッグやビルエントランスのシート、仲通り床面やハンギングでの装飾など、街のさまざまな場所に夏らしいデザインが展開されています。なかでも印象的なのが、「大切な人をまちに迎え入れる」をテーマにした14基の壮大な「花の回廊」。白とブルーの色鮮やかな花をモチーフとしたアーチが連なり、普段はビジネスパーソンが行き交う丸の内仲通りを、非日常空間へと変えていました。



そして、暑さがやわらぐ夕方からは、街の雰囲気も一変。「Neon Night」としてネオングッズの貸し出しやストリートミュージック、ナイトヨガなどを実施。モクテルやフード、スイーツを楽しめる飲食エリアも設けられ、オフィス街だった丸の内が、仕事帰りにふらりと立ち寄って過ごせる夜の遊び場へと姿を変えます。


さらに、丸の内仲通りの二重橋ビル・新東京ビル前では、7月24日から8月6日まで「NIGHT PARK & PLAYGROUND YURAKUCHO」も開催されました。夜間の公共空間の新たな活用を検証する社会実証プロジェクトで、光のアート作品やストリートボードゲーム、ゆったりと座れるソファ、モバイル花屋などが登場。人が近づいたり触れたりすることで光が変化するインタラクティブアートや、参加者の心拍と光が連動する仕掛けなど、テクノロジーを取り入れたユニークな試みも展開されました。


特徴的なのは、大きな音や派手な演出で人を集めるのではなく、通りかかった人が「ちょっと立ち寄ってみよう」と思える場所を目指していることです。目的を決めずにふらりと訪れ、ソファでくつろいだり、ゲームを楽しんだり、誰かと会話したりする。そんな余白のある過ごし方を街の中につくることで、夜間の公共空間の新たな可能性を探ります。
会場を歩くと、家族連れだけでなく、仕事帰りの会社員や海外からの観光客など、多様な人々が自然に交わる様子が印象的でした。花やアート、飲食、音楽、遊び、そして休憩スペースが街の中に点在することで、これまで「通り過ぎる場所」だった道路が、「立ち止まり、過ごす場所」へと変化しています。

昼は酷暑に対応しながら快適に過ごせる場所に、夜は働く人たちが仕事から少し離れて楽しめる場所に。時間帯に応じて公共空間の役割そのものを変えていくこうした試みもまた、「まちまるごとワークプレイス」という考え方を体現する取り組みの一つです。
企業の活動、街の公共空間、人々の日常をつなぐ「MARUNOUCHI SUMMER FEST 2026」。オフィス街というイメージが強い丸の内ですが、この夏、働く人だけでなく、その家族や来街者にとっても新しい発見に満ちた街へと進化しました。企業と街、そして人との新しい関係性を育むこの試みは、これからの都市のあり方を考える上でも、大きなヒントになるのではないでしょうか。
Photo:Yuka Ikenoya (YUKAI), Akiko Sugiyama (YUKAI)
Writer:Kana Yokota