丸の内仲通りはじめ、街のそこここにアート作品が並び、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンなどの文化イベントも間断なく行われている大手町・丸の内・有楽町エリアにとって、「アート」は身近な存在です。8月25日に“街を育てるアート”をテーマに開催された「Art City Forum」では、まちづくりとエリアマネジメントに吹き込むアートの新しい風を感じさせるものになりました。
ネイキッドが考えるまちづくり
Art City Forumは、プロジェクションマッピングなどアートプロジェクトや、メディアに囚われず幅広いクリエイティブを手がける「NAKED(ネイキッド)」が中心となり、アートとまちづくりの関係を考えるために発足したもの。2016年12月に第1回を開催、“シティドレッシング”をキーワードに、2020年に向けて国際都市東京のあるべき姿をアート視点で考えました。第2回の今回は、レイヤーをひとつ深化させ、より具体的なまちづくりの現場でのアートの可能性を考えました。テーマ・タイトルは「アートと街を育てる――エリアマネジメントとアートの連携」です。
この日は、エリアマネジメント、アートに関わるゲストスピーカーが招かれ、それぞれの立場からテーマに沿ったトークを展開。最後には登壇者全員でパネルディスカッションを行い、参加者と一緒にまちづくりとアートについて議論しました。
登壇者は、リガーレ理事長の小林重敬、ネイキッド代表の村松亮太郎氏、アーツカウンシル東京の機構長を務める三好勝則氏、リガーレ事務局長の藤井宏章(登壇順)。モデレーターは東京都の文化担当参与、トーキョーワンダーサイトの館長などを歴任した今村有策氏が務めました。
アート、まちづくりの現場から
※左上:リガーレ理事長の小林、右上:ネイキッド 村松氏、左下:アーツカウンシル東京 三好氏、右下:リガーレ事務局長 藤井
4者からの講演は、エリアマネジメント、文化政策、アート、それぞれの現場から現状と課題、可能性を報告しあうものとなりました。
最初の演者である小林からは、「エリアマネジメントとアートの連携の可能性」と題し、これからのエリアマネジメントが必要とするクリエイティビティの最大化のために、アートの力が必要になってきた、その背景が語られました。
村松氏はまさにアートの最前線からのレポート。氏は地域活性化とも深く関わる中で、その地域の魅力は「人のライフの蓄積」によって生まれるものであり、まちそれ自体がアートであることに気付いたと語り、「場所の意味性を取り出して再構築」するアートの可能性に言及。そして大丸有にアートを現出させるとしたら「伝統と最新、和と洋、いろいろなものが現れるカーニバルをやりたい」。「まちづくりというとデザインとアートがどう違うのかとよく言われるが、デザインは整理するもの、アートはその整理されたフィールドで踊る素粒子みたいなもの。素粒子同士がぶつかって新しい物質を生み出す、そんな提案をしていきたい」と話し締めくくりました。
三好氏は文化行政の立場から、文化・アートを地域で活用する際、まずそうした文化財・文化的財の固有性や意味性を、地域が理解することの重要性を指摘しています。氏によるとその理解がないまま観光資源化して失敗する事例が多く、「順番を間違えてはいけない」と繰り返し述べています。
藤井からは大丸有のエリマネがアートをどのように活用し、逆にアートにどのような貢献をしてきたかの紹介がありました。また、これからのエリマネが目指すものが「新しいものを生み出すクリエイティブなまち」であることを話し、そのためにアートからヒントを得たい旨も語られました。
東京2020にむけたアートなまちづくり
その後、登壇者全員によるパネルディスカッションも行い、アートとまちづくりについての議論を深めました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて何ができるのか、やるべきなのかといったテーマから、海外の事例を引きながら、大丸有にできることは何なのかといった議論も。また、逆に「まち」や「エリアマネジメント」がアートに対して何ができるのか、やるべきなのかという逆のベクトルの議論もあり、多方面からまちとアートを考える機会となったと言えそうです。
藤井は「こうして外部との意見交換することで、次の時代に向けた新しいまちづくりのアイデアが得られれば」と話しています。ネイキッドとは2012年の東京駅でのプロジェクションマッピング「TOKYO HIKARI VISION」でタッグを組んだわけですが、今後どのような連携ができるのか。クリエイティブなまちにするために、アートをどう活用するのか。また、アートのために、まちに何ができるのか。これからさらに意見交換を続けていきたいとしています。