「橋」は「端」と「端」をつなぐもの。人が行き交い文化が交錯する。だからそこには活気と賑わいが生まれる。日本橋川を挟んで向かい合う神田と大手町の場合、その役目を果たすのは「鎌倉橋」です。すでに両者の交流のシンボルとして定着しつつある鎌倉橋で、8月4日、夏の訪れを告げる橋洗いが行われ、神田・大手町双方のオフィスワーカー約100名が集まり、さわやかな夏を体験しました。
光るアイデア、びっくり箱のようなまちに
この「鎌倉橋橋洗い」、今年で3回目の開催となります。大手町のワーカーにとって、神田はランチや帰り際の“ちょっと一杯”でお世話になることの多い街。にも関わらず、今まであまり街同士のお付き合いがなかったことから、2015年の夏、この両者をつなぐシンボルである鎌倉橋を洗うプロジェクトで交流を深めようとスタートしました。今年の開催に先立って挨拶に立った、鎌倉橋橋洗いプロジェクト実行委員会副委員長の斎藤光治氏(内神田鎌倉町会長)は、鎌倉橋の歴史や地名の由来などを語るとともに、これからの神田と大手町の交流の深まりへの期待を語っています。
「江戸時代は、大手町が大名の街、神田は庶民の街だった。しかし、大手町に住まう殿様も神田が好きで良く遊びに来ていたそうだ。現代もこのプロジェクトを通して、大手町と神田の交流がもっと盛んになることに期待したい」(斎藤氏)
一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会からは、都市整備・運営部長の中野秀樹氏(株式会社サンケイビル東京ビル営業部長)が挨拶に立ち、日頃神田で食事をする機会が多いことから「ほとんど神田の住人みたいなもの」と思いの強さを話し、今後も組織としての交流を深めたいと話しています。
「大丸有は、神田、銀座、日本橋といった周辺との連携が重要でこれからも強化したいと考えているが、とりわけ内神田と大手町はお隣さん同士。顔の見える関係をきちんと作りたい」(中野氏)
また、千代田区からも環境まちづくり部まちづくり担当部長の大森幹夫氏にもご出席いただきました。大森氏はまちづくりにおける橋洗いイベントの意義を高く評価するとともに、公共空間を利用したイベントの実施に伴う苦労をねぎらうご挨拶を述べました。
普段できない橋の欄干磨き
橋洗い本番では、今年は上流側の欄干と歩道の清掃を行います。使うのはたわしとデッキブラシ。清掃に必要な水は、鎌倉橋の神田川のたもとに立地する株式会社日立アーバンインベストメントさまよりご提供いただきました。
100人を超える人数が一斉に入ることはできないため、交代制での実施です。最初は欄干から清掃。あまり汚れているようには見えませんが、たわしでこする人に聞くと「こすると砂埃が流されていく」とゴシゴシと熱心に洗います。
歩道清掃では、大丸有や神田のビルの清掃も行っているグローブシップ株式会社さまがポリッシャー(電動床磨き機)を用意し、参加者がポリッシャーでの清掃体験も行いました。ポリッシャーはパワフルで清掃力が高いのですが、慣れないとコントロールが難しいもの。興味を持ったワーカーのみなさんがウンウンとうなりながらポリッシャーを操る姿が見られました。
そして最後は定番となった水消火器を一斉放出するセレモニー。歩道の路面と欄干にたまった汚れを最後にキレイに洗い流して終了となりました。
夏の大手町は、鎌倉橋橋洗いから縁日へと続
内神田鎌倉町会の副会長の田熊清德氏は、この鎌倉橋橋洗いを「大手町、神田双方の人間が、まちの一員としての意識を持つことができる、大きな価値がある」と評しています。
「意識を持つことは、まちづくりの環境を整えるうえで大きな意味がある。神田の住人は商売(お店)をやっている人が多いのでなかなか参加できないが、今後さらに参加者を増やしたい」(田熊氏)
また、神田が祭礼文化に代表される昔ながらの生活文化や歴史を大切にしていることや、下町らしい気っ風の良さが特徴であることなども話し、「このようなまちづくりの活動を、歴史を大切にする大丸有エリアのみなさんとご一緒できるのは嬉しいこと」と述べています。
田熊氏は閉会式の挨拶で、神田山を切り崩した土で日比谷入江だった大丸有一帯が埋め立てられた歴史を紹介し、「大丸有も半分神田のようなもの」とも。2つの地域が歴史を通じて改めてお互いを知り、親近感を持つ面白い逸話です。
リガーレ事務局で本プロジェクトを担当する事務局次長の大林悟郎は、3年目を迎えて交流の深まりとまちづくりの機運の醸成に手応えを感じていると話しています。今後、この橋洗いを「大手町の夏と言えば鎌倉橋橋洗い、と思ってもらえるような象徴的なものに」することが目標。昨年度から橋洗いにつづいて、大手町仲通りで打ち水と「大手町縁日」が開催されるようになりましたが、どちらも夏の風物詩として定着していくことを目指します。
また、神田と大手町の間で人の交流がもっと盛んになれば、まったく違った顔を持つ神田エリアと大丸有エリアとが、お互いの魅力を引き出す、相乗効果のあるまちづくりができるのではないかと期待も見せています。
「東京駅周辺には多くの観光客がお越しになるが、下町風情あふれる神田のような街の要素を求められることも多く、その都度神田をご案内させて頂いている。お互いのエリアがPR面等で協力することで、オフィスワーカーだけでなく、観光客の行き来も増やすことができれば」(大林)
今後は、もっと大勢の方にご参加いただけるように掃除するエリアを広げ、より一体感を感じられるプロジェクトに成長させていきたいと大林。橋洗いは小さな場所のことかもしれませんが、神田・大手町のまちづくりにとっては実に大きな一歩であることを感じさせます。「夏といえば鎌倉橋橋洗い」、これを合言葉に、来年の橋洗いにはより多くのみなさんにご参加いただけるようにしていきます。
<協力・協賛企業>
一般社団法人情報連携推進機構、株式会社日立アーバンインベスト、一般社団法人大手町歩専道マネジメント、東京トヨペット千代田店、グローブシップ株式会社、株式会社楓屋、テイケイ株式会社、赤穂化成株式会社、
※大手町仲通りの打ち水、「大手町縁日」の様子