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新たな拠点を開設し、次のステージへ。 「有楽町アートアーバニズム YAU」の挑戦と進化 

アートと都市の共創を目指し、実践と実験を続けてきた「YAU」。 
2025年には新たな拠点とプログラムをスタートさせ、その活動を広げています。 

️有楽町アートアーバニズム YAU 

有楽町アートアーバニズムYAUとは、「有楽町アートアーバニズムプログラム」実行委員会が2022年2月に立ち上げた、アートを軸にしたイノベーション創出のプラットフォームです。アーティストやワーカー、企業、来街者らがフラットな立場で自身の資源を持ち寄り、都市に創造的なイノベーションを起こすことを目的としています。

アートアーバニズムの実践を目指し、「ビジネス街にアーティストの居場所をつくる」ことをコンセプトにした活動拠点「YAU STUDIO」は、2025年5月に国際ビルから北有楽ビルへ移転。また、10月には新たな拠点として「YAU CENTER ぜにがめ」を銭瓶町ビルディングに開設し、同拠点におけるアーティスト支援プログラムもスタートさせました。

また、9月には「YAU KIOSK」と題した移動型プログラムを始動。vol.1では行幸通り側の丸ビル外構に体験型イベントを展開し、10月にはvol.2として体験型街歩きを実施しました。

こうした新たな取り組みを通じて、YAUの活動はエリアと幅、どちらも広がりを見せた一年となりました。2026年からは「YAU LEARNING」として社会人向けの講座の実施も開始。これからも日本有数のビジネス街である大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアを舞台に「アーティストがいるまち」の実現を共創しています。

YAU 公式WEB https://arturbanism.jp

YAU CENTER ぜにがめ 

2025年10月、新たな年の活動拠点として「YAU CENTER ぜにがめ」を銭瓶町ビルディング(千代田区大手町二丁目6番3号)1階のスペースに開設しました。本拠点は、隣接するアートギャラリー 「CADAN大手町」と連携しながら、アートと都市が交わる新たな場として活動を展開します。また、本拠点では2つのアーティスト活動支援プログラムを始動。 

・パフォーミングアーツのための稽古場を軸とした「Y-base」 
・多様なジャンルのアーティストのためのプリントセンターである「Y-LAB」 

11月には「Y-base」のレジデント・アーティスト7組が決定し、活動を開始しています。今後もこれらのプログラムを通して、新たな実験と実践の場として運営していきます。 

加えて、開設日には連続企画「pump」第一弾となる「pump vol.001」が開催され、インスタレーションやパフォーマンスが発表されたほか、多彩なアーティストが集い交流する場となりました。今後も「YAU CENTER ぜにがめ」という新たな拠点から、新しい価値の創出を目指します。 

「pump vol.001」の様子。齋藤裕太による自作プリンター作品のインスタレーションをベースに、荒木優光が「音を聴くこと」をテーマにしたパフォーマンスを実施。冨樫達彦による料理とともに、音・食・アートが響き合う特別な夜となった。 

YAU KIOSK

2025年9月には、展示やワークショップ、パフォーマンスなどアートが街に出ていく移動型プログラム「YAU KIOSK」を始動させました。 

KIOSKには壁面や机、椅子などに展開できる部材を積み込み、コンテンツに合わせて空間を変身させます。あるときは本屋、またあるときはワークショップ会場、相談所や展示空間、さらには休憩所として、ワーカーや来街者に新しい体験や交流の場を提供します。「YAU KIOSK」が大丸有エリアの各所に現れることで、日常の中で偶然に出会うことのできる表現の拠点となることを目指しています。 

第一弾となる「YAU KIOSK vol.1」では、写真を軸に活動するアーティストコレクティブGC magazineによる『極屋』を展示。スマートフォンで撮影した写真を送ると、編集・プリント・額装といったプロセスを経て、わずか2分間で完成した作品として排出されるという、固定観念を変える新たな写真体験をお届けしました。 

YAU KIOSK vol.2 体験型街歩き 

11月には、「YAU KIOSK」の第二弾として体験型街歩き『からだと短歌で巡る!有楽町ミニツアー』を有楽町駅東口広場で実施しました。「有楽町ブック・ウォーク」(主催:「有楽町駅東口広場社会実験」実行委員会)のプログラムとして、短歌を詠むダンサー/振付家である涌田悠とともに、ビルの輪郭をなぞってみたり、猫の視点で眺めたり、立ち止まって音にからだを澄ませるなど、いつもとは少し違う視点でじっくりと街を散策。ツアー中には、涌田悠が有楽町を味わい生まれた短歌と共に踊るミニパフォーマンスも実施されました。 

Future Vision Summit 2025 

社会や経済の未来をアートによるビジョンメイキングを交えて考える、都市型イベント「FUTURE VISION SUMMIT 2025」を2025年12月9日・10日に開催しました。 

領域を超えて活躍するリーダーたちが意見を交わし合う「カンファレンス」には東京藝術大学長の日比野克彦や東京大学総長の藤井輝夫、アーティストのシアスターゲイツ、建築家の藤本壮介、アーティストの滝戸ドリタらが登壇。オープニングとなったキーノートセッションでは「アートにある『問い』を立てる力」が、昨今のAIが発達する時代においてどのような価値を発揮するかといったテーマで意見が交わされました。また、東京藝大と東大による「美しい穴を掘る。」プロジェクトなどに言及され、異なる領域間の距離が縮まることで拓ける新たな可能性への期待が語られました。 

アーティストの実践を紹介する「ショーケース」では、アーティストのリサーチ手法にフォーカスし、その価値発見・価値創造のプロセスを紹介した特別企画〈未踏の航路:創造的リサーチが拓く未来〉を展示。ビジネスにおける直線的なリサーチとは異なり、身体的な感覚なども手がかりとしながら、さまざまな発展を見せるアーティストのアプローチを知ってもらうことを企図しました。 

また、デンソーとAGCのコラボレーションにより生まれた〈赤と青の風景 内像〉は、ガラスという素材を製品ではなくアート作品として扱うことで、素材のエモーショナルな価値を抽象的に表現することを目指したものです。企業同士がビジネスではなくアートを軸に連携し越境することで生まれた作品は、まさにアートとビジネスという領域の融合を表しています。

メイン会場となった丸ビルに隣接する三菱ビルでは、三菱地所と包括連携協定を結び「都市型アートセンター機能の研究開発と実践」に取り組む東京藝大による「I LOVE YOU」プロジェクト2025『世界の心地よい生き方、働き方展』が開かれました。働く人々が創造性を発揮し、心豊かに暮らすことのできる都市のあり方を模索するために世界の取り組みを寄せたこのリサーチは、都市の持続的な成長とアートとの関わり方に対する考察を深めるものとなりました。 

2025年は「YAU STUDIO」の移転と新拠点の開設に代表される通り、新たなスタートを切った年となりました。今後も、YAUが育んできたアートコミュニティとビジネスセクターの協創拠点としての機能はそのままに、ビジネス街にアート活動が共存する唯一無二の場所として、アートと社会の新しい視点に出会い、語り合える場をつくり続けます。 

Writer:Marie Suzuki