DMO東京丸の内2020年度総会を開催しました

2020年7月6日、DMO東京丸の内の2019年度の活動振り返りと、2020年度の活動方針を発表する総会を開催しました。今回の総会は、新型コロナウイルス感染症の影響もあってオンラインでの開催も検討されましたが、年に一度会員の皆様に集まっていただいて報告をするというまたとない機会であるため、室内の換気や席の間隔を十分に確保するなどの感染予防対策を行った上で、リアルでの開催をすることといたしました。

また今総会では、withコロナ時代のMICEについて考えていくために、東京女子大学の矢ケ崎紀子教授、Sustainable Brands Japan Country Directorの鈴木紳介氏(株式会社博展)をお招きしてご講演もいただきました。その模様をレポートします。

丸の内エリアにおけるMICEの可能性を広げた2019年度

まず、各担当者より2019年度活動報告及び決算報告がなされました。前年度比で対応案件数が160%増加した2019年度。特に元来ターゲットとしていた「Meeting(会議・研修・セミナー)」「Incentive tour(報奨・招待旅行)」「Convention またはConference(大会・学会・国際会議)」に関する案件が7割を占めるなど、今後の活動に向けて大きな期待を抱かせるものとなりました。その一方で、成約件数自体は15件と、前年度比で1件増に留まりました。これは、結果的に延期となったものの、東京五輪の影響で施設に空きがなかったためです。ただその中でも、国土交通省や内閣府等が主催した「i-都市交流会議」など、会員企業と連携した上で主催者から高評価を受けた案件も多く、イベントテーマや主催者のニーズに沿っていかにエリアMICEを広げていくかのモデルケースをつくることはできました。

エリアPR活動については、FAMトリップ対応や海外ミーティングプランナーとのネットワーキング、海外商談会への参加などを実施。新型コロナウイルス感染症の影響で、今後はフェイス・トゥ・フェイスのエリアPRの機会は減少する可能性が高いものの、最先端の情報の入手、並びに会員の皆様への共有は定期的に行っていくことを報告しました。

MICE開催地としての丸の内エリアの魅力を多くの方に知っていただくために、MICEディスティネーションとしての魅力強化に向けた活動も実施しました。この活動については、和田倉噴水公園をユニークベニューとして試験的に活用推進したり、出光美術館のアートツアーや、お香の老舗・薫玉堂協力の下での香り袋作りワークショップなど、新たなユニークエクスペリエンスメニューの造成・掘り出しなどに取り組みました。

このように、2019年度は丸の内エリアにおけるMICEの可能性を広げる活動に注力していきました。

コロナ禍の中でもできることを突き詰める2020

続いて2020年度の活動計画について報告が行われました。そもそもこのDMO東京丸の内は、国際MICE都市丸の内の確立に向けて、都心型エリアMICEの誘致推進やモデル事例の創出をミッションとしています。本格的な活動をスタートさせてからの1年半で、そのための基礎体力は徐々に付いてきている一方で、丸の内エリアでのMICEの代表事例は2012年に開催されたIMF総会以降更新されていない状態でもあります。遠くない将来、この実績を更新するために会員の皆様とのネットワークを活用し、誘致を推進していきたいという思いを持っています。この目標実現のために2020年は様々な計画を検討していましたが、新型コロナウイルス感染症によって数々の大型案件や商談会、海外PRの機会が流れ、総会開催時点で今後の予定も見えない状況となってしまいました。そこで事務局では、コロナ禍の中でもできることを実現しようと、以下の4点を活動方針として再策定しました。

①「都市型エリアMICE」の受け入れ基盤としての本組織の存在・サービス内容の海外プランナーに対する訴求を継続
②MICEを取り巻く動向変化をリサーチし、共有する
③国内学会等、必ずしも海外案件に限らず、エリアMICE展開の実績となる実例づくりを進める
④引き続き、外部からの問い合わせには積極的に対応する

中でも注力していくべきは①と②です。①については、海外プランナーと直接コミュニケーションを取るのが難しい状況下で、SNSなどのデジタルプラットフォームを通じてコンタクトを取っていくことや、世界の人々に丸の内を知っていただき、興味を持っていただくための映像コンテンツなどを制作してグローバルに配信していくことを行っていく予定です。

②については、再び商談会が開催されるようになればスムーズに参加していくことはもちろん、オンラインも活用しながら会員の皆様と密なコミュニケーションを取り、情報を共有したり、勉強会を企画するなどして今後の活動に役立てることを目指していきます。

最後に、丸の内エリアにMICEを誘致していく上でエリア特有の専門性を確立していくことが必要と説明。世界一のビジネス都市を目指す丸の内エリアとしては、オープンイノベーションや金融、SDGsという3つをキートピックと設定して誘致活動を行っていく考えを紹介していきました。

コロナ禍のMICE、今できることとは

議案が終了したところで、この日のゲストである東京女子大学の矢ケ崎教授と、Sustainable Brands Japan Country Directorの鈴木氏による講演へと移りました。

最初に登壇した矢ケ崎教授には「コロナ禍でのMICE」と題し、パンデミックを経験した世界がMICEの未来を考える上でどのような手を打っているのか、今後どういった対策を取っていこうとしているのか、事例を交えて紹介していただきました。

今回のコロナは、当然ながら各国のMICE事業に大きなダメージを与えました。しかしながらどの国・地域も手をこまねいていたわけではなく、厳しい状況下でも先を見据えて動き出しています。例えば中国は、リアルとデジタルの両方を組み合わせた「ハイブリッド・イベント」の増加を見越して人材育成を開始したり、VR/ARを活用したイベント開催を検討しています。また香港や韓国、豪州では、高額な予算構成を組んでMICE事業の支援を行うことを発表しています。タイでも、政府機関であるTCEB(タイ国政府コンベンション&エキシビション・ビューロー)がMICE起業家の集中支援を宣言し、「Virtual Meetings Space Project」を設立。起業家の事業継続や従業員のスキルアップなどに取り組んでいます。

日本も競合国に負けじと様々な取り組みを実施しています。例えば政府の方針を踏まえた上で、地域・会議場ごとの感染予防対策ガイドラインの策定やハイブリッド対応、料金体系の見直し、国際会議主催者へのコンタクト、MICEの本質的な価値の言語化・可視化、さらにはMI(Meeting Incentive)への戦略転換などを挙げました。

「大人数が一箇所に集まる催しは行いにくいご時世ですが、人が集まること自体にはしっかりとした価値があるはずなんです。特にこの大丸有エリアは世界に冠たるグローバル企業の本社が集積しています。そうした企業では、随分前からオンライン会議を採り入れているはずですが、それでも今日のように集まってきているのです。その意味を可視化することは、今後PRをしていく上で重要な理論武装につながっていくと考えています」(矢ケ崎教授)

最後に矢ケ崎教授は、「今できること」として、次の7つを挙げました。

①MICEの本質を再確認
②これまでの経験の整理・分析
③ネットワークの維持と強化
④業界やライバルの動向の情報収集
⑤感染症対策を講じた商品開発
⑥MI戦略
⑦タイムライン・マネジメント

⑥については、世界中のMIで選ばれるために「大丸有だからこそ」という理由づくりに取り組むべきというもの。⑦については、MI戦略の構築からノウハウ・人脈づくり、中小規模向けのC (Convention)の開催やハイブリッド型対応、そして大規模Cとの連携などをしっかりと計画し、取り組んでいくべきだということです。そして矢ケ崎教授は、こうした取り組みの土台として「直接集まる価値」をしっかりと見つめ直すことが何より大事だと述べて、講演を締めくくりました。

MICE業界も強化すべきSDGsへの取り組み

矢ケ崎教授に続いて鈴木氏が登壇。2006年に米国で生まれた「サステナビリティ(持続可能性)」をビジネスに取り入れ、企業の競争力とブランド価値を高める活動を推進するグローバル・コミュニティである「SUSTAINABLE BRANDS®」を推進する鈴木氏からは、「SDGsの最新動向、MICE分野におけるサステナビリティの実践」という題で、SDGsが一般化していくアフターコロナ時代において、MICEの持続性を高めるヒントについて紹介がなされました。

一般社会にも徐々に普及・浸透しつつあるSDGsですが、今でも「エコ活動の一部」「慈善事業の延長」と見られることが少なくありません。もちろん、「温暖化に起因する様々な自然災害の増加」や「温暖化による界面上昇や干ばつ、移民の増加や生産地の変化等で穀物価格が上昇している」ことなどを考えると、環境面の取り組みも非常に重要です。しかしSDGsで設定された目標の達成は、ビジネスの成長の上でも非常に重要なことだと鈴木氏は説明します。実際、グローバル企業の代表者にアンケートをしたところ、実に87%の人が「SDGsへの対応が必須になる」と回答しており、かのビル・ゲイツも「国連が今世紀したことの中で最も重要なことだ」とコメントしています。こうしたことからも、SDGsの重要性が伺えるでしょう。

他業界に遅れを取るまいと、MICE業界もSDGsに取り組み始めています。特に「教育」「調達」「廃棄物」「管理」「エネルギー」の領域で実例も生まれてきています。例えば豪州のカンファレンスセンターであるMELBOURNE CONVENTION EXHIBITION CENTERでは、会議場で使用されるエネルギーとして再生可能エネルギーを活用したり、地元に対する雇用機会を創出しています。またシンガポールを代表する複合型施設MARINA BAY SANDSは、WWFと協力して2020年までに全魚介類の50%を責任を持って調達することを宣言するなどしています。このように、SDGs、サステナビリティの観点からイノベーションを起こしているMICE関連企業が出てきているのです。

また鈴木氏は、自身が所属する博展の事例についても紹介しました。

「体験型マーケティング活動を提供する博展は、展示会等でブースの製作も担っています。これまでは、デザイン性も担保できる木材を主材料としていましたが、とあるイベントで試験的に紙素材を用いてブースを製作することにしました。そうしたところ、木材で製作したブースと比較して総重量が3分の1ほどになり、高い施工性と分解性も獲得しました。その結果、幾つもの副次的効果が出たのです」(同)

その副次的効果とは、次の3点です。
①運搬の際に発生するCO2を削減
②設置/解体に掛かる時間を大幅に短縮し、光熱水利用削減と作業員の労働環境改善を実現
③女性作業員にも簡単に組み立てが可能となる

「つまり、環境に良い素材を活用した結果、働き方改革やジェンダー平等にもつながっていったのです。費用としては従来よりも18%ほど割高になりましたが、研究を重ねればコストダウンは実現できます。何より、SDGsを意識した顧客であれば、たとえ多少は費用が高くなっても我々に発注してくれるかもしれません。これからのMICEでは、こうした観点でデザインを行っていくことがスタンダートになるかもしれないのです」(同)

最後に鈴木氏は、丸の内MICEへの期待と、サステナブルなブランドになるためのポイントについて語りました。

「単独企業で対応していくことは難しいですが、丸の内のような日本を代表するビジネス街の企業が連合してサステナビリティに取り組んでいくと、選ばれるための資格と強みを生み出していけるようになると思います。そうすれば、イベント価値を向上できますし、最終的に丸の内MICEブランドを確立していけるでしょう」(同)

「そして、サステナブルなブランドになるには、①Purpose(自分たちがなぜ存在し、何のためにビジネスをしているのか)、②Technology&Science(粛々と取り組むだけでなくサイエンスを活かす)、③Collaboration&Co-Creation(他の街と比べて何が違うのかを見極める)、④Storytelling(ストーリーにして世の中に伝えていく)という④点が非常に重要だと思っています。我々が主催するサステナブル・ブランド国際会議も、いつか丸の内で開催できればと思っていますので、その際にはご支援、ご協力をお願いできればと思います」(同)

新型コロナウイルスの猛威は今なお世界を襲っており、完全な沈静化はまだまだ見えていません。しかし、DMO東京丸の内では、その中でもできることに取り組んでいきます。そしてアフターコロナの丸の内、そしてMICE事業をビフォーコロナ以上のものにしていくことを目指して参ります。これからのDMO東京丸の内の活動にぜひご期待ください。

 

 

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