夏休みの小学生を対象に、大手町・丸の内・有楽町という日本有数の企業が集中するエリアにおいて、「特別」「まちめぐり」「理科実験」「食」「工作」等をテーマにワークショップを開催している「大手町・丸の内・有楽町 エコキッズ探検隊」。19回目となる今年も魅力的なプログラムが多数ラインナップされ、応募が殺到しました。気になる内容をお届けするため、今回は「丸の内の地下にある秘密を探せ!〜こども地下探検隊〜」に密着。普段入ることができないスポットに潜入し、ひと夏の大冒険をした子どもたちの様子をレポートします。
丸の内の地下には巨大な冷暖房プラントがあった!
地下探検の集合場所は、大手門タワー・ENEOSビルにある「3×3 Lab Future」。業種業態の垣根を超えた創造性の高い人々の活動拠点として誕生したイノベーティブな場所に、未来を担う子どもたちが親御さんと一緒に続々と集まりました。
最初は座学からスタート。エコキッズ探検隊の事務局である“大丸有エリアマネジメント協会”の公式キャラクター「マルケン」に関するクイズに答えたあとは、本プログラムのプレゼンターである丸の内熱供給株式会社、通称「丸熱(まるねつ)」の皆さんが、丸の内の地下に隠された秘密についてレクチャー。なんと、丸の内の地下には、巨大な冷暖房施設があり、丸の内周辺にある約60棟ものビルを一括で冷やしたり温めたりしているといいます。家のエアコンだって大きいサイズなのに、いくつものビルを同時に冷やしたり温めたりするなんて可能なの!? 個別ではなく、まとめて冷暖房することによるメリットは?「?」がたくさん浮かんできます。
座学を終えると2班に分かれて見学がスタート。目的地である地域冷暖房施設のプラントへ行く前に、まずは皇居のお堀の水をきれいにしている浄化施設も見学させていただきました。
ここは、座学が行われた大手門タワー・ENEOSビルの地下にあり、三菱地所が中心となって管理・運営している施設です。内堀通りの地下を通したパイプでお堀から取水し、水をきれいにしてから再度お堀に戻しています。不純物の90%を取り除く能力があり、家庭用のお風呂サイズなら5秒くらいできれいになるそうです。ビルの屋上で集めた雨水も、浄化・貯留に活用しています。皇居周辺は国内外からの観光客がたくさん集まる場所。お堀の水をきれいに保つための施設が地下にあったとは! とても勉強になりました。
ヘルメットを装着し施設に潜入! 中は「あ、暑い!」
さていよいよ、地域冷暖房プラントへ向かいます。見学する地域冷暖房プラントは大手町センターとOtemachiOneサブプラントでどちらも地下にあります。待機室で子どもたちも保護者もヘルメットを着用し水分補給。なぜならここからは、関係者以外立ち入り禁止のエリアで、とても暑いのです。
プラントのある場所までは、エレベーターに乗ってぐんぐん下がり地下3階へ。扉を開けるとモワッとした熱気に包まれるとともに、ゴーッという機械音を発する巨大な冷凍機が目に飛び込んで来ました。
冷凍機とは、冷房用に利用される冷たい水を作り出す機械。6台あって3台が電気、3台がガスを熱源として5度から7度の冷水を作り出し、それが配管を通って各ビルに届けられ、冷たい空気に変換されています。このプラントにある冷凍機6台で、家庭用エアコンの約1万台分の冷気を生み出しています。すごい威力ですね。
ちなみに、熱源を電気とガスに分けているのは、環境に配慮しながら冷たい空気を安定供給するため。電気またはガス、どちらかの配給に問題が起きても大丈夫です。
冷気(冷水)と蒸気をビルへと運ぶSUPER TUBEもすごい!
続いて訪れたのは、ボイラーゾーン。冷凍機エリア以上に暑く、汗が吹き出してきます。こちらでは、8台のボイラーが暖房や給湯用に利用される熱い蒸気を生み出しています。のぞき窓から中を覗いてみると、青く燃え盛る炎が見え、メラメラと熱気が伝わってきます。その迫力に子どもたちからも自然と「おぉ〜」と歓声が。
冷凍機で作られた冷水やボイラーで作られた蒸気を各ビルに運ぶのがSUPER TUBEと呼ばれる地域配管です。冷水の配管2管、蒸気の配管2管が丸の内周辺の地下を全長約30kmに渡って張り巡らされていて、冷水と蒸気を約60棟のビルに届けています。各ビルは熱交換器を介して冷水・蒸気を受け取り、空調や給湯などで使用されています。
地域冷暖房は地球にやさしく都市災害防止効果もある注目のシステム
そもそもなぜ地域冷暖房が必要かというと、各ビルに冷暖房の設備があるより一括管理した方がCO₂の総排出量を削減できたり、ヒートアイランド現象の要因を削減できたり、地球環境にやさしい要素が多いからなのだそうです。ほかにも、都市美観の向上に繋がったり、冷暖房設備がなくなる分、ビル側はスペースを有効利用できたり、人件費や維持費をカットできて経済性が上がるという効果もあります。近年では、都市災害防止にも有効としてさらに評価が上がっています。北欧各国では50〜80%という高い普及率を誇っていますが、日本でも新宿、渋谷、みなとみらいや北海道など、全国各地で実施されているそうです。
地域冷暖房プラント内は写真撮影OKだったので、参加者は初めて見た巨大な機械のいろんな部分を写真に撮影したり、ボイラーの前で記念撮影したり、それぞれ思い出に残しました。
帰り際の子どもたちに感想を聞いてみると
「ボイラーの中の炎がすごかった!」
「いっぱい勉強になりました」
「地上に通じている穴を見上げたらものすごい深さでびっくりした!」
と心に残ったことを話してくれました。
大人である筆者にとっても、丸の内の主要ビルの冷暖房が地下の施設で一括管理されていて、その現場を見ることができるなんて興味津々の内容でした。小学校低学年の参加者には少し難しかったかもしれませんが、普段入ることのできない地下施設に潜入し、見たことがないようなサイズの設備やそこから発せられるものすごいエネルギーに、子どもたちも目を輝かせて引き込まれていたことが印象的でした。
この日自分で撮影した写真を見返しながら、いつか改めて地域冷暖房の意義を実感し、この日の熱気を思い出してほしいなと感じました。
エコキッズ探検隊
https://ecokids.tokyo/
Writer:Miyuki Takahashi