リガーレは今年で15年目を迎えます。エリアマネジメントの考え方がまだ一般的でない時代から先陣を切ってまちづくりに取り組んできましたが、今年は「さらに新しい第一歩を踏み出す」(理事長:小林重敬)年となるはずです。5月18日に開かれた総会では2016年度の活動報告とともに2017年の活動方針を確認しました。後半は基調講演として(株)伊藤園の笹谷秀光氏をお迎えし、「これならわかるエリアマネジメント―みんなでつくる未来のまち―」と題したご講演をいただきました。
15年目の新たなステップへ
2016年の活動の振り返りでは、環境、交流、活性化の各分野で取り組んだ活動の概要を報告しました。まちをフィールドにさまざまな活動を展開してきましたが、特記すべきは「公的空間活用モデル事業」です。公道含む公的空間をどのように利活用するかは、今後のエリアマネジメントでももっとも重要なポイント。昨年は丸の内仲通り、行幸通り、行幸通り地下通路等の活用を積極的に推進しました。
2017年度の活動方針としては3つの重点項目を会員のみなさまに示しました。
(1)公的空間活用の運用体制の確立、積極的利活用の推進
(2)「DMO東京丸の内」の基本的な活動の運営と、信頼の獲得
(3)15周年を迎えるエリアマネジメント団体としての意義、価値の広報、PR活動
公的空間活用については、モデル事業から通常の経常稼働段階に移ります。また、DMO東京丸の内は今年度に入って発足、ウェブサイトも開設しましたが、本格的な活動はこれから。MICE(Meeting、Incentive、ConferenceまたはConvention、Exhibitionの頭文字を取ったもので、大きな集客効果を望めるビジネスイベントの総称)の誘致は、東京2020オリンピック・パラリンピックを含め、これからのエリマネの重要な柱のひとつになることは間違いありません。
リガーレで結びついて協働と共創を
後半の(株)伊藤園 常務執行役員 笹谷秀光氏のご講演は、豊富な実例を紹介しながら、エリアマネジメントとまちづくりのあるべき姿を提示するものとなりました。
笹谷氏は、まずグッドデザイン賞を受賞した丸の内や、世界のレジリエンスシティ100に、日本で唯一認定された富山市での取り組みを紹介し、そのポイントを「センス・オブ・プレイス」「シビック・プライド」の2点であると解説。センス・オブ・プレイスとは、その地にしかない感覚、価値を指す言葉で、観光のみならず、シビック・プライド=市民の誇りを醸成するうえでも重要なもの。
そして、その醸成のためには地方創生でも言われる「産官学金労言」(※)のような連携が重要であるとし、企業の積極的な参画が求められていることを語りました。笹谷氏は連携において特に「プラットフォーム」が重要であることも語り、「今日のこの場もそういう集まりだと思う。まさにここから新しい取り組みが始まるのでは」と期待を語りました。
※従来の産官学に加えて、金:金融界、労:労働組合、言:メディアも含んだ連携のこと
そして企業がやるべきことは、単なるCSRではなく、社会価値と経済価値を同時に実現する「共有価値の創造」=CSV(Creating Sahred Value)であるとし、「これは日本的に言えば“三方良し”ということ」と解説。自分良し、相手良し、世間良しの三方良しは、近江商人の商売哲学でしたが今や世界に通用するコンセプト。ただし「分かる人には分かる」という「陰徳善事」の心得ではグローバルに通用しないので「発信型三方よし」に変える必要がある。笹谷氏は、伊藤園のCSR活動、CSVの実践が、情報発信に努めたことから日経ソーシャルイニシアチブ大賞や、『フォーチュン』誌の“世界を変える企業50社”に選ばれたことを紹介し、「発信」を付け加えることがいかに重要かも力説しました。
まとめとして、企業のCSR、CSVには「『いいね!』と感じてもらって、説明すると『なるほど』と思い、良いものだから『またね!』と思える、そのサイクルが大切で、外部評価されることで『さすが』と思ってもらえるようになる」と総括。また、発信のポイントとして12月に行われる地方創生まちづくりフォーラム「まちてん」の実行委員長も務める経験から実感している、「物語性」「わかりやすさ」「戦略性」が重要であるとまとめました。
そして最後に、各地を巡るなかで見つけた画像のうち、「これこそがリガーレのあるべき姿だと思った」という1枚の写真。それは世界遺産、岐阜県白川郷の茅葺き屋根を、近くの住民、遠方のファンなどさまざまなサポーターたち、大勢で修復する1枚。「これこそが人と人の結びつき、すなわち“結”であり、リガーレそのものでは」と、リガーレの未来に向けて、大きな激励の言葉をいただきました。(※リガーレ=ligareは、ラテン語で「つなぐ、結び合わせる」の意)
もっとワイガヤ!
総会の後は恒例の“ワイガヤ”の場。乾杯の挨拶に立ったリガーレ理事長の小林は「笹谷氏の仰った“結びつき”こそ、これからのリガーレに必要なもの。そして、その結には、信頼と互酬性が必要になるだろう」と話し、会員同士のますますの交流を呼びかけました。