2022年度リガーレ総会を開催しました

5月26日にリガーレの総会が開催され、30名弱の会員の皆さまにお集まりいただきました。リアルでの開催は2年ぶりのこととなります。2022年度はリガーレ設立20年の節目の年でもあり、冒頭の小林重敬会長、岸井隆幸理事長の挨拶では、ともに20年を振り返り、先駆者として日本独自のエリアマネジメントのこれからを牽引していってほしいとの期待が語られました。

2021年活動報告と2022年活動方針

前半は、1号議案として2021年度の活動報告、2号議案として2022年度の活動方針について報告がありました。以下、主だった報告内容について記します。

◆丸の内ストリートパーク
2019年からスタートした公道利用の実証実験。丸の内仲通りに天然芝を敷き、来街者、エリアワーカーに憩いと楽しみの空間を提供する取り組みで、2021年度は春、夏、冬の三期81日間で実施しました。「季節ごとの移り変わる諸条件の検証」が目的のひとつとなっており、センサーを使った人流やにぎわいの調査なども行われています。
季節ごとに取り組み内容、検証内容も異なりました。春はゴールデンウィーク含む16日間実施し、リラクゼーションを中心に、健康効果の測定などを行いました。夏は3ブロックにエリアを拡大し、ブロックごとにテーマを変えて三様の空間を40日間展開。アーティストのライブペインティングを行った「Enjoy Eating Out」、公園でのリゾート&ワーク=ワーケーションを実現する「PARKcation」などが白眉となりました。冬は12月の24日間で実施し、火を使った暖房器具など、屋外での寒さ対策が大きなチャレンジとなりました。防風の什器、暖房器具はもちろんのこと、「見た目で暖かくなる」仕掛けなども行われたそうです。
担当者は「季節ごとにさまざまな角度から検証し、データも集積できた。1年を通して今後の展開に活かせる、新たな可能性を見出すことができた」と成果を振り返りました。

◆丸の内軟式野球
75回目となった2021年度の大会は38チームが参戦、8月からの約1カ月半の期間中、6日間に渡って熱戦を繰り広げ、三菱電機が優勝、東宝ゴジラが準優勝となりました。開幕時がちょうど新型コロナウイルス感染症の拡大とも重なったため、開催には感染予防に万全の体制で臨んでいます。担当者は「コロナに十分に注意して無事に終えられた。リアルでの交流が少なくなっている中、その価値を見直すことができ、大きな成果となった」と振り返っています。

◆丸の内ラジオ体操
2021年度は、春の開催が新型コロナウイルス感染症のために中止となり、緊急事態宣言が解除された10月の開催となりました。感染対策のスペース確保のため、路上にフラフープを設置しましたが、見た目にも非常に楽しげ。ランチタイム終盤の12時45分~で実施し、全7回のべ481名にご参加いただきました。担当者は「事前申し込みナシで参加できるゲリラ方式にしたことで、非常に大勢にご参加いただけた。2022年度はすでに実施しているが、予想を超える人数が参加しておりうれしい悲鳴」と話しています。

◆エコキッズ探検隊
夏休み期間に小学生を対象に行うイベント。ワークショップ形式で、さまざまな学びと体験を提供するもので、15年継続している「息の長いイベント」です。コロナ禍のため2021年度も前年度に続きリアル開催を断念し、番外編として「マルケンクイズラリー」を実施しました。大丸有エリア内にQRコードとクイズを設置し、参加者にはラリー形式で回答して回ってもらいます。10カ所設置し、うち5問正解で、エリアで利用できるクーポンをプレゼントします。「クイズが難しいといった感想や、好きな時間に参加できるのが良かったという声もいただいた。今年はリアルで開催したい」と担当者。

◆エリアマネジメント広告
エリア内のフラッグを中心にした屋外広告。リガーレの主要な収入源となっており、2021年度は過去最大収益となりました。東京オリンピック・パラリンピック関連の企業フラッグ、六本木から移転してきた東京国際映画祭関連のフラッグが大きく、また、12月にはハイメゾンのポップアップイベントに伴うフラッグ掲出がありました。担当者は「有名なブランドにご利用いただいたことは、大丸有の媒体価値の認知が高まっていることを感じる。また、ハイメゾンの影響は大きく、今後の営業につなげたい」と述べました。

◆DMO東京丸の内
新型コロナウイルス感染症のためインバウンド全体が萎縮・停滞する一方、オンライン活動が加速。2021年度は(1)エリアプロモーション活動、(2)都心型エリアMICEへの沁み出し案件支援、(3)エリアの特徴・素材を生かした各種メニュー造成の三本柱で活動しました。メディア露出、オンライ商談会への参加のほか、(2)の沁み出し案件では、東京国際映画祭、東京栄養サミットの開催が実現。今後行政イベントなども行われる予定です。担当者は「行政イベントと民間イベントは手法が異なるが、ナレッジを生かして展開を広げたい」と話しています。(3)については、バーホッピング、おにぎりワークショップなどを実施。コロナ禍で集客に悩むエリア内の飲食店とWin-Winの関係を構築できたとしています。

◆アートアーバニズム
美術館、劇場、アート作品などのアートリソースを活用し、エリア内のアーティストの活動を活性化することで、エリアの魅力を向上するとともに、アートとビジネスの化学反応によって、イノベーションを喚起、都市の競争力向上を図る取り組み。2020年4月~2021年12月にかけて「アート×エリアマネジメント検討会」を実施し、今年3月「アートアーバニズム宣言」を発表しました。
この具体的な実践が2月1日~5月31日の期間で展開した「有楽町アートアーバニズムプログラム(YAU)」です。「日常にアーティストがいる街」を目指し、有楽町ビル10階に「YAU STUDIO」を設立、アーティストに開放しました。国際ビル地下1階には「YAU COUNTER」を設置し、交流拠点に。ここでの成果は、エキジビション、パフォーマンス展示、トークショーなどからなる「YAU TEN」(5/20-27)で発表されました。
アートアーバニズムには「アーティストとビジネスセクターをつなぐ」「アーティストの活動を日常的に支える」「エリアのアートリソースの活用と面的展開・発信」の3つの観点(機能)が必要であり、アーツカウンシル、エリマネ、インキュベーションの3つの機能を併せ持つ、「アートエリアマネジメントカウンシル」の設立を、23年度を目標に進めることになります。
「リガーレを中心に増員を図り、体制を整える予定。アートアーバニズムによってこれまでにないコンフリクトがまちなかで起こるようになるはず。そこから都市のイノベーションを促す原動力が生まれることに期待したい」と担当者は述べています。

◆2022年度の活動予定
リガーレは今年創立20周年を迎えます。この節目にあたり、2022年は振り返りと、まちづくりの方向性の再確認を行いながら、活動を展開していきます。
従来の「まちづくりを通じて、人々の幸福度の向上を実現」という目的、「公的空間・施設活用」「コミュニティ形成」というミッションは変わらず踏襲。しかし、「公的空間・施設活用」においてはバーチャルを含めた場作り、原資確保が重要なキーワードとして設定されました。「丸の内ストリートパーク」「丸の内軟式野球」「エコキッズ」「DMO丸の内」「アートアーバニズム」等の個別の活動についても、それぞれ20周年を総括し、新たな未来を描くためのキーワードが埋め込まれ、それに沿った活動が行われることになります。
今年は特にバーチャルの活用がポイントのひとつになるようで、デジタルツインやメタバースなどバーチャルでの活動やバーチャルでの外部連携を進めたい考え。また、「バーチャル丸の内」のさらなる活用の検討も進めていきます。

◆ゲストスピーカー講演
「メタバースとエリアマネジメント-メタバース空間での出会い・コミュニティとは?」
クラスター株式会社 亀谷 拓史氏/三菱地所株式会社 奥山博之氏

メタバースのプラットフォーム、イベントを提供しているクラスター株式会社の亀谷氏がゲスト。三菱地所では、エリアマネジメント企画部が中心となってクラスター社とメタバースでの企画、イベントを実施しています。
エリマネ企画部の奥山は、同部がスタートアップや大学などと連携し、新しいサービスや仕組みを街に実装してきたことを話し、クラスターとのメタバースでの取り組みもそのひとつであると紹介。「バーチャル丸の内」の構築や、「丸の内ストリートパーク」でもバーチャルな実証実験を行っていることを報告しました。
「ネット回線の大容量・高速化によって、一般の人でも簡単にバーチャルなサービスにアクセスできるようになっている。我々としても新しいコミュニケーションのツールとして、また、丸の内を好きになってもらう施策のひとつとして期待している」(奥山)
と今後の期待を述べています

クラスターとリガーレの取り組みは2021年にスタート。「バーチャル丸の内」を構築したほか、ビル屋上のバーチャルバーの提供、メタバースからリアルイベントに送客するツールの提供などを行っており、2022年は「バーチャル仲通り」の制作を行う予定になっています。この日の講演では、クラスターの事業内容を紹介し、メタバースの可能性を論じました。
クラスターは2015年設立のスタートアップで、「バーチャル業界では老舗」かつ最大手のひとつです
「ミッションは、バーチャルで経済が回るプラットフォームを作ること。世界で一番敷居の低いメタバースプラットフォームを謳っており、現時点で、世界で一番メタバースのイベントを実施している企業でもある。2021年だけで1000件以上、累計1000万人以上の動員を実現した」(亀谷氏)

メタバースは「メタ(=超)」と「ユニバース(=宇宙)」からなる造語で、具体的な仮想空間またはそのサービスを指しています。コロナ禍で一般化した亀谷氏はメタバースについて、ZOOMのような動画コミュニケーションとの違いを、「3D」と「身体性」の2点であると説明しています。身体性とは「そこにいるような感覚と能動的な行動があり、偶然の出会いもある」ような没入感とリアリティを指すようです。コンシューマー、クリエイター向けのプラットフォーム、サービスも提供していますが、法人向けにはメタバースイベントのプラットフォーム提供がメインになっています。
メタバースプラットフォームの特徴は、①コスト圧縮、②演出・制作の自由度、③リアルとの融合、④多様なコミュニケーションの4点。メタバースのイベント会場は、いわばデジタルデータの集積なので、使い回しが可能でアレンジも容易。社員総会や研修会、総会などが同じアセットから簡単に作り出せます。イニシャルで1000万円かけてメタバースのイベント会場を作っておけば、その後はコストが不要。「年に10回やれば、1回100万円の予算でできる計算になる」と亀谷氏は説明しています。
商談会から社員研修、パビリオンなども開催可能で、日本企業、官庁、グローバルなIT企業、エンタメ企業はもちろんのこと、「メタバースで何をやったらいいか分からないという会社まで、さまざまな方とご一緒している」(同)とのこと。大阪万博のメタバース、経産省との合同就活イベント、環境省のオンラインイベントなど、今後も大きな取り組みが続きます。

この他、ユーザーが簡単にメタバースを構築できるプラットフォームも提供しています。「スマホを開けばメタバースを作れる」という手軽さで、次第に利用者を増やしています。一部のアーリーアダプターでは、1日7、8時間をメタバースで過ごす例もあるそうです。
このようなプラットフォーマーは世界でもまだ少なく、国内ではほぼクラスターの一強状態。
「コンテンツ事業者は多くいますが、日本でプラットフォームを提供しているのはほぼクラスターだけ。日本のアニメ、youtube文化は世界に通用するもので、メタバースとも相性が良い。今年はクラスターもグローバル展開を狙っていきたいと考えている」(亀谷氏)
亀谷氏はそのように今後の展望を述べて講演を締めくくりました。
講演後の質疑応答では、メタバースの可能性に感じ入る一方で、まだまだメタバースそれ自体への理解が及んでいないところもあり、活発な質疑応答が行われました。

Share This

Copy Link to Clipboard

Copy