大丸有で取り組む「ささやかだけど、すてきなこと」。
リガーレがアップサイクルブランド“Ligaretta”をはじめた理由。

大丸有エリアのまちづくりを展開するリガーレがこの度、設立20周年企業事業としてアップサイクルブランド「Ligaretta(リガレッタ)」を立ち上げることとなりました。 そもそもなぜ、ブランドを立ち上げるに至ったのでしょうか? リガレッタを企画した 、リガーレ事務局の長谷川春奈と、長谷川を支えるリガーレの事務局長の大谷典之に話を聞きました。

バナーフラッグを再活用し「都市型サーキュラー」に挑戦

――まず、リガレッタはどんなブランドなのか教えてください。

長谷川:リガレッタは、大丸有エリアで掲出されたバナーフラッグなどをアップサイクル(*1)し、アパレル や小物を展開する ブランドです。「関係者の想いが込められたバナーフラッグを、2週課程度 の掲出期間が終わったからと廃棄してしまうのはもったいないよね」という雑談からスタートしたのですが、話しているうちに身近な方が続々協力してくださり、自然な流れでブランドを立ち上げることになりました。

大谷:長谷川さんの想いに共感してくれた人たちが、「じゃあ僕はムービー作るよ」とか「私は展示会においてもらえるように交渉してみるね」という感じで、少しずつ広がってきたのです 。

長谷川:発起人は私なのですが、みんなで作ったというか、不思議な感じなんですよね。普段、大丸有のまちづくりをしている私たちらしく、人と人との繋がりの中で育まれていった気がします。

ーーパネルには「都市型サーキュラー」という表現がありましたね。これはどういう意味でしょうか?

長谷川:アップサイクルについて学び、リガレッタのコンセプトを議論していくなかで、デザイナーさんが発案した造語になります 。サーキュラーエコノミーというのは、今の大量生産•大量商品を前提とした直線型経済システムに対する言葉で、製品や素材、資源の価値を可能な限り長く保全•維持してゴミを少なくする循環型経済システムのこと。各地で様々な取り組み事例がありますが、大丸有エリアでは里山で行われているサーキュラーエコノミーと同じようにはできない。逆に、丸の内のバナーフラッグのように都市の経済活動だからこそ出てくる広告物などをアップサイクルすることは都市型サーキュラーエコノミーと言えるのではないかと。 都市型サーキュラーの実現に向け、今出来ることから取り組んでいます。

大谷:都市部の中でも、大丸有エリアは住人がいないという特徴があります。住宅地であれば、学校など自然と人が集まる場所があるので、そこと連動してコミュニティが形成されますが、大丸有エリアの場合は誰かが先導していかないと難しい部分がある。それをやるのがリガーレの役割です。そのためには、大丸有の人々を惹きつけるストーリーや魅力が必要だと考えました。

――掲出されていたバナーフラッグは、どのようにして製品になるのですか?

長谷川:洗浄したのち、バナーフラッグにシークレット地紋と呼ばれる模様を施します。バナーフラッグは知的財産が関係しているので、 、加工する前に元のデザインをカムフラージュし、知的財産の課題をクリアする 必要があります 。その後、デザイン会社のPaper Paradeさんが、 設計段階から生地のロスを最大限に抑えたパターンを作ってくださり、それを元に職人さんに縫製していただいています。

ーーシークレット地紋は生成AI  がデザインしていると伺いました。

長谷川:そうなんです。 地紋にも著作権が発生することなく、長く使用できるよう考慮しています。

大谷:バナーフラッグのアップサイクルに際しては、掲出したクライアント企業の了承をとる必要がありますが、趣旨を説明すると快諾いただけることが多いのです。「実は私ももったいないなと思っていました」と言ってくださる方もいて。みなさんが大切に作られたバナーフラッグですから、丁寧にアップサイクルして、長期間誰かの大切に利用されるものになればいいなと思っています。

リガレッタのストーリーをさりげなく伝えたくて

――今回の展示会は、「A SAMLL, GOOD THING.〜ささやかだけど、すてきなこと〜」と題した12日間のイベントの一環として行われました。これはどういう経緯だったのでしょうか?

大谷:リガレッタの展示•販売を観光案内施設「Have a Nice TOKYO!」で2週間開始することにしました。その際、リガーレがこの先のまちづくりで具現化したコンテンツも盛り込むことにしました。具体的には「BYSN SANJO ROASTERY」のコーヒーを楽しめるカフェと、絵本やまちづくりに関する書籍を並べたコミュニティスペースを併設し、「A SAMLL, GOOD THING.〜ささやかだけど、すてきなこと〜」というコンセプトにしました。リガレッタは、スタートしたばかりの取り組みですから、「私たちすごいことしてます!」ではなくて「等身大でできる範囲で始めました」というニュアンスを伝えたく、このコンセプトを採用しました。

長谷川:「BYSN SANJO ROASTERY」は、障がいのある方々が 手作業で丁寧に豆をピッキングして高品質のコーヒーを作っている新潟(三条市)の焙煎所なんです。大丸有で働いている人たちにその存在を知って欲しくて無料配布しました。

大谷:「BYSN SANJO ROASTERY」に関しても同様のスタンスです。D&Iや障がいのある人々の活躍を強調するのではなく、それらのコンセプトが自然に溶け込んでいる空間にしました。リガレッタの商品を見ながら、あるいは本を読みながらサービスのコーヒーを味わっていただき、興味を持ってくださった方に「BYSN SANJO ROASTERY」のことを自然と伝われば良いと感じています。


――さりげなくPRするってなかなかできないことだと思うのですが、なぜそこにこだわったのでしょうか?

大谷:リガレッタ事業は商品を販売することが最終目的ではありません。人々にリガレッタの商品に込めたストーリーを知ってファンになっていただき、そこに大丸有のまちづくりへの想いを感じていただくことが真の目的です。リガレッタを一緒に企画して作ってくださったアーティストの方々も同意見でして、「丁寧に一つひとつ積み上げていく過程を見てもらう」ことが重要と考えています。

リガレッタを通して、大丸有で人と人とが繋がるために

ーー 今回の展示でこだわったことや意識したことはありますか?

長谷川:リガレッタのストーリーをさりげなく、それでいて直感的に伝えるために、4枚のパネル作りにはこだわりました。「もうちょっとこの図を入れた方がいいんじゃないか」、「図じゃなくて短いテキストで表現するのがいいんじゃないか」など、みんなでこだわった甲斐があり、特に左から2番目のパネル (可能な限り廃棄ロスを出さない設計概念)は特にわかりやすかったと多くの方に褒めていただきました。


長谷川:あと、今回は展示ゾーンと物販ゾーンを設けたのですが、両方あることに意義があったな と感じています。リガレッタの商品は一つひとつが安価ではないかもしれません。 。でも展示ゾーンでリガレッタができ上がるまでのストーリーや工程を紹介したことにより、なぜこの価格なのかを理解していただけたと感じています。 ある学生さんが「同じお金を使うなら、高級ブランドよりもリガレッタを購入したい」と言ってくださったのがとても印象的でした。

大谷:リガレッタの商品は決して安価ではないので、エリアの素材を長く大切に使っていきたいという想いをご理解いただけたら嬉しいです。そして、買った商品を長く愛用していただくために、これからはリペアや交換会なども考えていきたいと思っています。

取材時にもパートナー企業や付き合いのあるエディターの方々が来場。

ーーイベントには、どんな反響がありましたか?

大谷:想像以上に様々な人々にお越しいただけました。コーヒーも多くの方々に試飲頂けました。なかでも最も嬉しかったのが、スタッフの方々が自分の家族を連れてきてくれたことです。それは、リガレッタのストーリーや「BYSN SANJO ROASTERY」との取り組みを、家族にも見せたいということだと思います。そういうシーンがたくさん見られたのが良かったですね。またパートナー企業のみなさんや、昔一緒に仕事をしていた元同僚やクライアントの方々も来場してくれて、ここで偶然出会うことができたことも楽しいひと時でした。大丸有で働く人々が、偶然知り合いに出会うような場所をまた創っていきたいと思います。

長谷川:今年度の下期か来年度にはリガレッタを起点とした コミュニティを作り、様々な方と一緒に大丸有エリア内でバナーフラッグに続く別の素材の発掘や、商品企画をやろうと思っています 。展示を見にきてくださった方にお伝えすると「参加したいです」と言ってくださる人も大勢いらっしゃいました。

大谷:根底に流れるコンセプトは、リガーレが展開する他のプロジェクト、例えばMarunouchi Street Parkやアーバンテラスなどと同じです。活動の場を作り、人々の緩やかなコミュニティを作ることがリガーレのミッションです。その実現に向けて、アップサイクルブランドLigarettaを、リガーレらしく育てていきたいと思っています。

*1_本来であれば捨てられるはずの廃棄物に、デザインやアイデアといった新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせること

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