2025年1月28日(火)から2月9日(日)までの2週間、東京・大手町の「アナザー・ジャパン」で、アップサイクルブランド「Ligaretta(リガレッタ)」と学生が運営する地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」によるコラボレーション企画展『アナザー・丸の内』が開催されました。今回のポップアップは、丸の内のまち起点ブランド「Ligaretta」のストーリーや商品を紹介するとともに、循環型社会の実現に向けた取り組みを多くの人に知ってもらうことを目的としています。その様子を詳しくレポートします。
東京駅前日本橋口前「TOKYO TORCH」街区にある「アナザー・ジャパン」。
店頭のブースには、Ligarettaのアップサイクル商品がずらり。ディスプレイやキャプション制作なども、すべて学生のアイデアで作られたものです。
『アナザー・丸の内』は、アップサイクルブランド「Ligaretta」と、学生たちが運営する「アナザー・ジャパン」がタッグを組んだ企画展です。Ligarettaは、丸の内仲通りに掲出されたバナーフラッグをアップサイクルし、ファッションブランドとして新たな命を吹き込むプロジェクト。一方、アナザー・ジャパンは、47都道府県の地域産品を学生たちが仕入れ、販売するセレクトショップで、地域活性化と学生の成長を目指しています。このイベントでは、「Ligaretta」の商品を期間限定で販売するとともに、アップサイクルやサーキュラーエコノミー(循環型経済)についての紹介も行われました。学生たちが主体となって運営するショップでの開催という点も、大きな注目を集めました。
「自分達でポップアップイベントを作り上げることはありますが、こうして学生主導でLigarettaを紹介・販売してもらえるのははじめてなので、私自身もとても新鮮でワクワクしました」と語るのは、「Ligaretta」企画者である大丸有エリアマネジメント協会の長谷川春奈。
「アナザー・ジャパンでは学生たちをセトラー(開拓者)と呼び、収支管理・商品セレクト・デザイン・現場オペレーションなど、ショップ経営のすべてを担っています。商品の説明から接客まで、すべてを学生さんたちが行うことで、彼らの熱意や真剣な姿勢が伝わり、来場者からも温かく受け入れてもらえたようです。特に、アップサイクルやサーキュラーエコノミーについての解説は、学生たち自身が学びながら伝えることで、より深く理解していただけたのではないでしょうか」
取材時に接客してくれた戴麟懿(タイ・リンイ)さんは、「お客さまに、Ligarettaの説明をすると、『廃棄されるはずだった素材がこんなに素敵な商品に生まれ変わるなんて驚き!』『丸の内の街の歴史が詰まっているようで特別感がある』という嬉しい声が寄せられた」と話します。
バナーフラッグを再利用したバッグや小物は、シンプルで使いやすいデザインながら、素材の持つストーリーが感じられるものばかりです。
「アナザー・丸の内」展で一番売れた商品がストラップ。社員証ストラップなどにも使えるスマホ用ストラップは使い勝手が良さそうと男女問わず手に取る人が多かったとのことです。
ここで、今回『アナザー・丸の内』の企画展に携わったセトラーの高橋悠さんと、アートディレクションを手がけた谷中晴香さんにもお話を伺いました。
ープロモーションや販売方法でこだわったことを教えてください。
高橋さん:接客ではお客さまに実際に商品を手に取ってもらい、バナーフラッグ由来の質感を体感していただくことを重視しました。特に、本商品が一点ごとに異なる風合いで、まちの物語が沁み込んだ素材としてアップサイクルされている過程をお伝えしました。
谷中さん:「アナザー・丸の内」企画展では、「働くだけではない丸の内」について知っていただくため、ブランドや商品が作られた背景をお伝えすることを重視しました。店舗では、「アナザー・丸の内を1文字で表すと?」というクエスチョンを提示し、お客さまにも丸の内について主体的に考えていただく機会となったと思います。
医学生の谷中さんはアナザー・ジャパンでデザイナーをしており、チラシやキャプションのデザインなど、すべてのアートディレクションを手がけました。
ーLigarettaの取り組みについてどのように感じられましたか?
高橋さん:一般的なアパレル製造では生地裁断時に20~30%のロスが発生しますが、Ligarettaはバナーフラッグの幅に合わせた設計によりロスを10%以下に抑えており、端切れなどは廃棄せずワークショップに使用するなど、素材を最大限に活かす仕組みが組み込まれている点が印象的でした。また、サステナブルな視点を持ちながらデザイン性を損なわない工夫に、持続可能なファッションの新たな可能性を感じました。
谷中さん:Ligarettaの「ものづくりへのこだわり」と「持続可能なファッション」という視点が非常に印象的でした。素材選びや製造過程において環境負荷を考慮しながら、高品質なアイテムを提供する姿勢には学ぶべき点が多くありました。デザインだけでなく、社会的な価値を生むブランドのあり方を改めて考えさせられました。アナザー・ジャパンとのコラボを通じて、その魅力をより多くの人に伝えられたと感じています。
―アナザー・ジャパンに関わることで得た気づきや学びは?
高橋さん:バイヤーとして全国の商品を扱う中で、地域の魅力は商品という「モノ」そのものではなく、その背景にある文化や人とのつながりにあることを学びました。また、企画展運営や大丸有エリアでの外部イベントへの出店などは、企業や自治体など多種多様なステークホルダーと連携しながらプロジェクトを推進する必要があり、利害調整の難しさを感じることもありますが、それ以上に学びが多いと実感しています。
谷中さん:地域の魅力を伝えるには、単に商品を並べるだけでなく、背景や想いを発信することが重要だと実感しました。また、同じ商品でも見せ方や伝え方によって受け取られ方が大きく変わることを学びました。地域のつくり手との関わりを通じて、ものづくりの奥深さを再認識し、デザインを通じて価値を可視化する役割の大切さを改めて感じました。
―今後取り組みたい社会課題や叶えたい目標は?
高橋さん:就職活動を進める中で悩むことも多いですが、アナザー・ジャパンでの経験が就活や人生の「核」になっています。特にバイヤー経験を通じ、地域の事業者様がローカルデザイナーや大学と連携し、新たなブランドを生み出す現場を目の当たりにしました。しかし、その活動を発信する「場」と「機会」はまだ少ないと感じています。将来はこの環境を広げ、地域の価値をより多くの人に届けられる仕事に就きたいと考えています。
谷中さん:将来は地元・群馬県の医師として、医療とデザインを掛け合わせたプロジェクトに挑戦し、健康や地域社会の分野で新たな価値を生み出したいと考えています。病院の一般的なイメージをより明るく親しみやすいものに変えるため、アナザー・ジャパンの活動で学んだ「愛される場づくり」や「地域の魅力の紐解き方」を応用し、医療と地域をつなぐ仕組みを作っていけたらと思います。
『アナザー・丸の内』は、アップサイクルブランド「Ligaretta」と学生たちが運営する「アナザー・ジャパン」が協力して実現した、持続可能な社会を考えるきっかけとなる企画展となりました。廃棄されるはずだった素材が美しい商品に生まれ変わるプロセスや、学生たちの熱意ある運営は、来場者にも訴えかけるものがあったことと思います。このイベントを通じて、丸の内の街の新たな魅力や、循環型社会の可能性を多くの人が感じ取ることができたのではないでしょうか。『アナザー・丸の内』は終了しましたが、「アナザー・ジャパン」には日本の魅力を再発見できるような素敵な商品がたくさんあります。ぜひ足を運んでみてください。
Writer:Kana Yokota