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過去最大規模で開催された「Marunouchi Street Park 2024 Summer」“すべてがまじわり共存する”実験。

実施日:2024年7月25日(木)〜8月18日(日)

6年目、11回目の開催となる「Marunouchi Street Park 2024 Summer」。今回は、開催範囲が過去最大! 丸の内仲通りの約500メートルにも及ぶ区間で、訪れる人の夏を盛り上げる25日間のスペシャルパークを開催しました。

テーマは「i-ma-i」(あいまい)。「境界をあいまいにし、すべてがまじわり共存していく」という意味で設定したテーマです。少し意味深なこのテーマがどんなところに反映されているのか、各ブロックの様子を紹介しながら、詳しく説明します。

Block 1: NAKEDプロデュース「都会の川床」で納涼体験

丸ビル・郵船ビル・三菱商事ビル前にあたるBlock1は、クリエイティブカンパニー「NAKED」がプロデュースしたエリア。NAKEDといえば、東京駅の駅舎を使ったプロジェクションマッピング「TOKYO HIKARI VISION」が有名ですが、今回は水面をイメージしたエアミストと光の演出で「都会の川床」を演出しました。

畳に腰掛けて、左右のスピーカーから流れる自然音に身を委ねると、体感温度が少し下がったような気がするから不思議です。

Block 2: 線と形に隠された「まじわる」メッセージ

丸の内二丁目ビル・丸の内仲通りビル前に位置するBlock2は、少し変わったロングテーブルやベンチカウンターを設置し、多くの人たちに活用されたエリアです。

巨大な三角定規のような形状のロングテーブル(実際は台形)、あなたならどこに座りますか? 気心の知れた友人や家族と一緒であれば、細くなった上底あたりに座った方が話しやすいでしょう。逆にひとりで仕事したり、食事をとったりしたいときは他人とほどよいスペースを取れる下底の方が好ましいのでは。どの程度人とまじりたいのか、気持ちのグラデーションに合った場所に座ることができます。

さらにユニークなのが、そんな人との距離感が「線」にも表現されている点です。テーブルの表面を見てみると、10cm四方の方眼罫が描かれており、人との距離が広い場所は薄く細い罫線、人との距離が近い場所は濃く太い罫線になっています。いろんな形のテーブルやベンチがありますが、それぞれに異なる罫線が描かれています。

今回のテーマ「i-ma-i」は、i(私)とi(私)がma(間)を挟んでいますが、これらのテーブルやベンチは人と人との間、距離感を意識したデザインで、テーマを表現しました。

ちなみに、ここでイスやテーブルの土台として使われている木材は、木材の加工に必要な「乾燥」の工程中の木材を利用しています。Marunouchi Street Parkでの役目を終えると加工工程に戻り、最終的には木材として木製製品の原料となるので、経済性も高く、環境にやさしい取り組みでもあります。

Block 3: ピクニックが楽しめる人気の芝生ゾーン

丸の内パークビル・明治安田生命ビル前のBlock3は、道路に芝生を敷設し、可動式のBlock什器が設置されたゾーン。アンジュレーションも設置し、芝生上で寝転ぶように座って、日頃の視線とは違う見え方がするような工夫も行いました。リラックスして過ごせる芝生のエリアは、例年子どもから大人まで人気が高く、Marunouchi Street Park内でも特に人が集まります。

観光客が旅の疲れを癒すようにまったりとしていたり、赤ちゃん連れのママ友グループが芝生の上で赤ちゃんを遊ばせながらお茶していたり、丸の内で働く仕事帰りのビジネスマンたちがビール片手に談笑していたり、カップルが夜のピクニックデートを楽しんでいたりと、芝生ゾーンでは朝も晩も人々のいろんな姿を見ることができました。

そんな芝生の居心地の良さを十二分に味わってもらいたいと、ピクニックに必要なシートやライトなどを無料貸し出し。そして、ピエール・エルメやGARB Tokyoなど丸の内仲通りの周辺14店舗では、ピクニックにぴったりなテイクアウトメニューを用意。グルメでおしゃれなピクニックができると人気を集めました。さらに、平日の夕方はストレッチ教室なども開催され、参加者は都会の真ん中でのリフレッシュタイムを満喫しました。

Block 4:車道と歩道を一体化、まじりあうベンチ

新東京ビル・丸の内二重橋ビル前のBlock4エリアは、丸の内仲通りの木陰に合わせてテーブルとイスを設置し、休憩スポットとして大活躍。馬場先通りを挟んだBlock3と空間的連続性を持たせるため、北側に芝生も敷設し、こちらでもピクニックなどのアクティビティを楽しむことができました。

半円形の芝生は、これまでのMarunouchi Street Parkで使用してきた様々な形の芝生を再利用したものです。また、特筆すべきは変わった形状のベンチ。車道からも歩道からも座れるような形状になっていて、丸の内仲通りの歩道と車道の境界線をあいまいにしてまざりあう、まさに今回のテーマである「i-ma-i」を表現しています。

これまで本来道路である部分にはパークを楽しむ人たちがのんびりしていて、歩道部分は単なる通行路として人々が行き交っていて分断されがちでした。今回、このような仕掛けがあることで歩道を歩く人たちも自然とMarunouchi Street Parkに関わることができ、車道と歩道に調和が生まれました。

なお、テーブルや足元に設置されたライトは、暗くなると自然に光るセンサーライトを採用。ソーラーパネルで蓄電された電源を使用し、環境に配慮した取り組みを行いました。

Block5:拡張された最南端エリアでは注目イベントが目白押し

今回、新たにMarunouchi Street Parkのエリアとなった、新国際ビル・国際ビル前のBlock5。南の玄関口となるこちらのエリアには、全面的に芝生を敷設し、オフィス街の真ん中に誰でも気軽に寛げる上質な空間を創出。

このエリアでは、オリンピックイヤーらしいイベントが積極的に開催されました。なかでも世界で活躍する体操ニッポンの特殊イベント「体操パーク in MARUNOUCHI」が特徴的です。平均台やタンブリング(「ゆか」で使用される跳ねる床)を体験できるブースや、実際に試合で使われる跳馬を使った立体展示が行われたり、体操ニッポンの選手による体操教室が開催されたりして、多いに盛り上がりました。

また、Block5ではフラフープを常設し、誰でも気軽にフラフープを楽しめる試みも。備え付けの黒板にフラフープを回した記録を書けるようになっているため、日々記録が更新されていき、密かに熱いフラフープバトルが繰り広げられていたのも印象的でした。

都市部の心地よい広場として進化し続けるために

今年のMarunouchi Street Park 2024 Summerは、観光客もビジネスマンも利用しやすく、老若男女誰もがふと一息つきたくなる上質な空間を創出。それは、コロナ禍を経て人々が活動的になった2024年の夏にぴったりな存在感だったような気がします。

また、「Marunouchi Street Park」は、都心の広場・公園的空間の在り方を検証する社会実験であることが命題。単に人を集めるだけでなく社会問題の解消に取り組むことも大切にしています。

今回は、都市部の公園・広場の在り方として、丸の内への来訪者とこの地で働く就労者、日常と非日常、歩道と車道……。性質の違うものがぶつかり合うことなく、自然とまざりあうための実験も行いました。また、環境的にも経済的にもエコでサスティナブルな設備の可能性も探求。これらの実験結果を次のMarunouchi Street Parkの運営に生かしていきます。

Photo:Tada(YUKAI)
Writer:Miyuki takahashi

活動分野:公的空間を活用した賑わいづくり