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官と民、それぞれの長所を掛け合わせ、丸の内仲通りを「世界に誇れるストリート」に

実施日:実施日:2026年2月16日(月)

2025年3月、千代田区とリガーレは丸の内仲通りの維持管理に関する連携協定を締結しました。「世界に誇れる丸の内仲通り」を目指すこのパートナーシップは、大丸有エリアに何をもたらすのでしょうか。

連携協定の運用を担う千代田区環境まちづくり部地域まちづくり課の吉田氏、同道路公園課の樋口氏、三菱地所プロパティマネジメント(MJPM)の林氏、リガーレの谷口の4名に、まちの未来に向けた想いを聞きました。

(写真左から)
樋口 清治
千代田区 環境まちづくり部道路公園課 維持担当係長
吉田 拓
千代田区 環境まちづくり部地域まちづくり課 まちづくり担当係長
谷口 千絢
リガーレ
林 彩香
三菱地所プロパティマネジメント(株) プロモーション事業部 企画ユニット 主査

丸の内仲通りの高質さの維持は千代田区全体に好影響を与える

── 丸の内仲通り維持管理協定の締結のきっかけを教えてください。

吉田 維持管理協定を締結する以前から、この通りを「人中心の空間」にしていくために、官民一体となって高質な空間づくりを目指す協定を締結していました。その流れから今回の維持管理に関する協定が結ばれています。この協定は、まちづくりを進める上で生じる行政だけではできないことを民間にサポートいただき、課題を解決する枠組みです。

谷口 「人中心の空間」は、「誰もが快適に過ごせる通り」」を意味します。そのため、安全性や美観をどう維持するかが大きな課題でした。さらに、舗装のひび割れなど経年劣化も進んでいたため、まずは現状を正確に把握することが不可欠でした。そこでMJPMとともに劣化状況を丁寧に調査し、その結果を基に、千代田区さんと5年間で優先順位をつけて改善していく方針を整理しました。

── 維持管理協定を締結する上で印象に残っていることはありますか。

吉田 維持管理には、まちづくりや現場管理、事業運営といった多角的な観点が不可欠ですので、多様な要素をひとつにまとめ上げる作業は大変でした。異なる立場の人々をどうつないでいけば互いの長所を引き出せるのかについて、労力をかけてじっくりと模索していったことは印象的でしたね。

谷口 丸の内仲通りを「世界に誇れるストリートにする」ということを目標に掲げていました。その実現のために千代田区さん、大丸有まちづくり協議会、リガーレなど現場レベルでの課題感や将来像を共有していきました。議論を通じて、“守りの維持管理”から“世界に誇れるストリートを一緒につくっていく”という前向きな姿勢へと意識が揃っていったことは、とても印象深いプロセスでした。 

── 丸の内仲通りを高質な空間として維持することは、大丸有エリアや千代田区にとってどのような意義があると考えていますか。

吉田 現在の日本は、かつての自動車中心社会から歩行者を大事にする時代に変わってきています。千代田区としてもウォーカブルなまちづくりを推進し、歩行者ネットワークの形成を重視してきました。その観点から、千代田区の中でも象徴的な存在である丸の内仲通りをより良い通りにすることは、区全体に好影響を与えると考えています。

谷口 ウォーカブルなまちの実現は、千代田区民の方はもちろん、来街者や就業者の方々にとっても安心して歩ける環境づくりにつながります。丸の内仲通りのアーバンテラスのように、ホッと一息ついたり、美しい景観の中で人との交流を深めたりできる「居心地の良い空間」を醸成していくことが、まちの魅力や回遊の促進にも結びついていくと感じます。

吉田 区としては、幅広い年齢層や属性の方々にこのエリアに訪れていただきたいと考えています。リガーレさんには丸の内仲通りの維持管理に加え、様々なイベントの開催を通じて多大な貢献をしていただいています。もしもこうした連携が途絶えてしまえば、エリアがオフィスワーカーに偏り、まちのにぎわいが損なわれる懸念があります。

── 多様なプレイヤーが連携するからこそ、多くの方が訪れるまちになっているのですね。

丸の内仲通りの維持管理はまちづくりのモデルケースに

── 現在、具体的にどのような形で維持管理を行っているのでしょうか。

 来街者や就業者にとっての安心安全な環境づくりが主な業務です。道路上の欠損などを目視で確認し、不具合を見つけた場合には注意喚起表示や一次的な簡易補修を行っています。緊急性があるものに関しては千代田区さんに報告して補修していただくこともあります。また、連携協定では年1回修繕工事を行うことが決まっているのですが、日常点検で得た情報を踏まえて、千代田区さん、リガーレと協議しながら工事計画を立案しています。

── 維持管理業務がスタートして感じている変化や手応えについて教えてください。

 MJPMとしては今回の協定をきっかけに、どうすれば沿道ビルと区道の連携を深め、安心安全なまちづくりに寄与できるのか、これまで以上に考えるようになりました。実際にそのための体制が構築されたことが一番の変化であり、手応えを感じている部分です。

樋口 日常点検はMJPMさん、緊急対応の際には千代田区の道路公園課というように、丸の内仲通りを維持管理する上での役割分担が明確になった点が手応えでしょうか。それぞれのやることがはっきりしている分、関係者間でまとまりが出てきていて、今後何らかの課題が生じても、コミュニケーションを取りながら解決できる雰囲気が醸成されていると感じています。

谷口 お二人が話すように、維持管理するための体制が構築できたことで、図面上には反映できない課題を話し合える環境が整ったことはとてもありがたいですね。官民連携で物事を進める上で、どちらかのニーズばかりを満たしてしまうとバランスが悪くなる恐れがありますが、ここまでは一緒に課題を共有しながら進めることができていると感じます。

── 今のところ、官民連携による良い相乗効果が生まれていると言えそうですね。

吉田 それは重々感じています。お互いの良いところを持ち寄ることで、どちらか一方だけではできなかったことにも取り組めていると言っていいと思います。

樋口 例えば、丸の内仲通りにはアルゼンチン斑岩が敷き詰められています。この通りを象徴する特殊な素材で空間の高質化に貢献していますが、その反面、補修が難しいものでもあります。今回の維持管理ではアルゼンチン斑岩を補修できる高い技術を持った企業とも連携ができていますので、この点はまさに良い相乗効果ですね。

谷口 リガーレとしても、今回の維持管理を通じて、まちの課題解決のためにどうやって議論を進めればいいか、どのように役割分担を行えばいいか学ぶことができています。この経験は維持管理に留まらず、官民連携によるまちづくりのモデルケース的な形になっていくという認識です。定例会を重ねるごとにフランクに会話できるようにもなっていますので、この関係性をさらに強固なものにしていきながら、世界に誇れるストリートを一緒につくっていきたいですね。

吉田 リガーレさんとは以前から大丸有地区のエリアマネジメントで連携していますが、今後、維持管理協定の中で課題が出て来た際には、より一層協力しながら動いていければと思います。

── 最後に、今後この維持管理協定の中でどのような役割を果たしていきたいか、丸の内仲通りをどのような空間にしていきたいか、それぞれが描く未来図を聞かせてください。

 けやき並木や石畳が織りなす上質な景観は、丸の内仲通りの大きな魅力です。沿道ビルの運営管理やイベント企画に携わる立場として、この景観がまちのブランディングを支える重要な要素であると日々実感しています。就業者や来街者にとって日常と非日常が心地よく交差するこの環境を、これからも持続的に支えていきたいと考えています。

樋口 道路管理を担う者としては、やはり安心安全な道路が一番重要です。そのような空間をリガーレさんと共につくっていきたいと思います。

谷口 道路の維持管理を官民連携で行うケースは全国的にそこまで多くなく、先進的なチャレンジと言えます。リガーレはこれまでMarunouchi Street Parkをはじめ、様々な社会実験を実施していますが、今回の取り組みを通じて、大丸有と千代田区をこれまで以上に誇れるエリアにするために、行政の方々と一緒に新しい取り組みを進めていきたいです。

吉田 丸の内仲通りを誰もが訪れる空間にしていきたいです。この目標が実現できれば、きっと川端緑道やその先の神田といったエリアや、日比谷エリアなどにも良い影響が波及していくでしょう。丸の内仲通りを起点に千代田区全体に相乗効果が生まれることを期待しています。

Photo:Yuka Ikenoya (YUKAI)
Writer:Tomoya Kuga

活動分野:年間活動報告