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夏の暑さに挑む未来のストリートデザイン。「Marunouchi Street Park 2025 Summer」レポート

実施日:実施日:2025年9月5日(金)〜9月21日(日)

真夏のギラギラと照りつける太陽が少し落ち着いた9月初旬。木漏れ日が差し込む丸の内仲通りでは、今年も「Marunouchi Street Park 2025 Summer」が開催され、街に心地よいにぎわいが戻ってきました。

毎年7月末から8月にかけての開催でしたが、今年は酷暑を避けるべく日程をずらしたことで、ランチやカフェタイムだけでなく、仕事終わりのちょっとした打ち合わせや朝の読書時間など、時間帯によって思い思いに外で過ごす人の姿が見られました。

「街並みを調和させ、融合する」という発想

今回のテーマは、“Blending the Streetscape(ブレンディング・ザ・ストリートスケープ)”。直訳すると「街並みをブレンドする」という意味ですが、ここでは景観と機能、街と人、店舗と道路といった、これまで分かれていたものを“ひとつに融合させる”という試みを指しています。

仲通り沿いの飲食店と連携し、テラス席を歩道から車道へと自然に広げることで、街の中に新しい居場所を創出。さらに道路と歩道を隔てていたボラード(車止め)を撤去し、車道の舗装にも芝生やプランターを取り入れて、緑が街に溶け込むような風景を生み出しました。

全長およそ300メートルにわたる3ブロックを交通規制し、都心のど真ん中とは思えないほどゆったりとした時間が流れる空間を実現しました。オフィスワーカーがランチを楽しんだり、休日には子ども連れが芝生の上でくつろいだり。街の“通り道”が、“滞在したくなる場所”へと変わっていきます。

“暑いから外に出ない”を、変えていく

そして今回、特に注目を集めたのが「酷暑対策」を取り入れた空間設計です。気候変動が深刻化する中、真夏の東京でも快適に過ごせるストリートをどうつくるか。その問いに対して、プロジェクトチームはさまざまな工夫を凝らしていました。

まず、人工芝によって地面の熱をやわらげ、屋外席にはダイキン工業株式会社製の屋外用エアコン「OUTER TOWER」を設置。ふと吹く冷たい風に「え、外なのに涼しい!」と笑顔がこぼれる場面も。「暑いから外に出られない」ではなく、「暑い日でも外が気持ちいい」。そんな未来の都市空間へのヒントがここにありました。

また、清涼感のあるハーブ園をイメージした植栽プランターを用いて並木を立体的につなげ、丸の内仲通りの緑と道路を一体的に繋げる景観を創出しました。ローズマリーやオリーブなどのハーブを中心とした植栽を配置することで、見た目にも涼やかで、香りによるリラックス効果も感じられる空間に。

丸の内パークビル前のBlock3では、「ちょいウェル」と題したアクティビティコンテンツとして、フラフープや縄跳びなどの運動アイテムが自由に使えるように設置されました。

取材時も、仕事の合間のリフレッシュに身体を動かしたり、同僚とちょっと遊んだりする姿が見られました。久しぶりにフラフープをしてみると、意外とうまくできずに笑ってしまう人もいれば、何分も続ける強者も。ホワイトボードには、それぞれの記録が書き込まれていきます。

また、期間中の火曜と木曜日の18時から18時半まで、トレーナーを迎えてワーカーや来街者を対象にした無料のストレッチ教室も開催されました。終業後にストレッチをして凝り固まった身体をほぐすことでモチベーションが向上。多くの参加者が集まり、街の真ん中に“健康的なひととき”が生まれました。

Marunouchi Street Parkでは毎回、機能的でユニークなファニチャーで訪れる人の憩いの場を創出していますが、今回特徴的だったのは、まるで人気ゲーム「Minecraft(マインクラフト)」に登場する草ブロックのような、ユニークな形のベンチ。親しみやすい雰囲気のデザインは、子どもから大人まで幅広い世代の関心を引き、まちに遊び心を添えていました。

これまでは“みんなで座るベンチ”が多かったですが、「ひとりでも気楽に座れる場所がほしい」という声から誕生したそう。腰掛けてみると、駅のホームのベンチのように、ちょっと休憩するのにぴったりなサイズ感です。

ストリートが“陸上トラック”に変わった3日間

9月14日(日)から16日(火)には、アシックスによる期間限定のスペシャルイベントが登場しました。

ワールドアスレティックスのオフィシャルパートナーでもある同社が、Block1エリアを陸上競技トラックに見立てた空間へと大胆にリデザイン。赤茶色のトラックが仲通りに伸びると、普段はビジネス街として知られるこの通りが、一気にスポーツの舞台へと変わりました。世界陸上の応援企画として実施されたこのイベントでは、誰もが気軽に参加できるランニング体験ブースやフォトスポットも登場しました。

スーツ姿で立ち寄るビジネスパーソンや、世界陸上を見てきたばかりだというファミリーなど、それぞれが思い思いに走り、笑顔を見せる姿が印象的でした。

約10mを実際に走ってアスリートが挑む究極の一瞬を体験できる貴重なイベントでした。自分が走った軌跡を写真に記録してくれるサービスも。身体を動かした後は、これからの目標をシールに書いて掲示します。

都市の道路空間が、スポーツと人のエネルギーで満たされる。その光景は、“街の真ん中でも身体を動かす楽しさを分かち合える”という新しい都市の可能性を感じさせてくれるものでした。

このほか、週末にはMarunouchi Street Park公式オーディションを経て選ばれたミュージシャンによる演奏も行われました。夕暮れ時、秋の訪れを感じる風に吹かれながら上質な音楽に耳を傾けると、東京・丸の内という街の魅力が、より深く、しっとりと胸に響きました。

Photo:Yuka Ikenoya (YUKAI)
Writer:Kana Yokota

活動分野:公的空間を活用した賑わいづくり
プロジェクト:Marunouchi Street Park