ベースフラッグプロジェクト「POLYPHONIC REFLECTIONS」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リガーレでは、2022年5月20日(金)より大丸有エリアにて、TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH PROJECT*¹(以下、TPR)とのコラボレーションによる新しいベースフラッグ POLYPHONIC REFLECTIONS(ポリフォニック・リフレクションズ)を掲出しました。

◆プレスリリースはこちら

本プロジェクトでは、大丸有エリアに設置された266枚のフラッグを、この地に勤務し、来訪し、散策する人々の心に少しの違和感と豊かな好奇心を駆り立て、内側から新たな「気づき」や「発見」が生まれることを通じて、豊かな社会活動や都市生活を送るきっかけをもたらすような「アートフラッグ」として機能させることを目的としました。

フラッグは写真とワード、2つの要素で構成されており、断片的かつ抽象的な組み合わせは、人々の想像力を喚起する重要なファクターとなります。大丸有エリアを訪れたさまざまな属性の人たちから発せられた言葉から抽出した多声的(ポリフォニック)なワードと、このエリアの建築、空間、人々や一瞬の光の姿をとらえた写真がフラッグを舞台として響き合い(リフレクション)、街路に新たな風景を立ち上げます。

《ポリフォニック・リフレクションズ》のターゲットは、大丸有エリアで働く人々や、ショッピングや娯楽を楽しむ、街ゆく人々です。アートは問いかけであり、コミュニケーションでもあります。そこでは、受け手となる人々を信じるということも重要な要素となります。街路でゆらぎたなびいている写真と言葉を日々目にする中で、彼らの中にある多様な感性が少しづつ刺激され、その心にゆっくりと創造的な問いを誘発すること、そうして変化した人々がこれからの街の主役となっていくような、そのようなフラッグであることを願っています。

写真家・村田啓が撮影した数千枚の写真から、フラッグに採用する写真をセレクトしました。村田はこのエリアの建築、空間、人々や一瞬の光の姿など、大丸有という特徴的な都市空間の中で起こる様々な現象や状況をグラフィカルに撮影しました。特にビルが両側にあることによって太陽光が反射し合い、街を舞台のように照らし出している仲通りの様子などに着目しています。石塚俊とのコラボレーションによる作品も制作、使用されました。

大丸有エリアをこれまでとは異なる視点で見つめ直し、新たな発見や多様な観点をもたらすことを目的として、都市研究コレクティブ・A NEW SCALEが普段この街にあまり馴染みがない職業や社会的属性の6名とともにフィールドリサーチを実施。フラッグのワードは彼らの言葉から抽出していますが、さまざまな想像を喚起し相互に共鳴するものとして再編集もしています。


~言葉が生まれた背景~
それぞれの「言葉」が生まれた背景も知っていただき、その上で、みなさんが「言葉」から感じ取ったストーリーをを自由に、ご自身の中で思い描いて頂きたいと思います。
*柔らかい交換
「交換」とは太古から現在まで、ビジネスからコミュニケーションまであらゆる時間と場所に存在する人間の営みだが、人間同士のみならず環境や文化とも私たちは交換をしている。貨幣や資産だけではなく、この街に居る時間、私たちは記憶や感情にいたるまで様々なものを交換している。ナビゲーターがこの街を歩きながら「受け取った」何かを、こうして言葉にして街に戻すこともまた、一つの交換かもしれない。
*声の生態系
トム・バグスはこの街を不思議なほど静かだと言い、理由の一つに広告規制があるからかもしれないという事実に深く納得していた。かたやボディワーカーの斎藤悠は絶えず聞こえるさまざまな音をノイズと捉えていた。「声」や「音」と認識するものにはビルボードの文字すらも含まれており、その意味では街はさまざまな立体的・平面的、そして多層的な声に溢れている。
*見えない答え 想像力が動きだす
パルクール トレーサー 佐藤惇の言葉。ゴールが見えない道の方が、トレーサーとしての想像力が引き出される。整然としたまちよりも、先が見えない道のほうが探求しがいがあるとも言える。
*生けるものの居心地
プランツディレクター 鎌田美希子との対話から着想した言葉。「人のためのまち」として作られた場所は、そのほかの生き物にとっても居心地の良い場所だろうか?人や動物、植物を含めた生けるもの全体の居心地を考えたい。
*反射する光
複数のナビゲーターから発せられた言葉。有楽町から大手町にかけて、たくさんのビルが向かい合う仲通りを歩くと、それぞれのビルに当たる光が相互に反射しあい、一瞬一瞬異なるその時だけの特別
な風景を生み出していることに気づく。
*立ち止まる軌跡
壁や階段の手すり、公園など、さまざま空間を読み解きながらパフォームするスポーツ、パルクール。パルクールトレーサーの佐藤は、「街に余白を見出して軌跡を残す」とも語る。ふと佇んだり会話する景色がある街には、そんな余白が感じられるのかもしれない。
*架空の自分
パルクール トレーサーである佐藤惇が言った言葉。パルクールとは、白地図状態の街のなかに余白を見つけ、そこに自分のルートを見出し、軌跡を残していくスポーツ。最初に想像力の中で街を跳び、実際に一つ一つ障害物を超え、自分を高めていく。
*植物の時間
プランツディレクター 鎌田美希子との対話から。土や緑が少ないエリアだが、ビルとビルの間や公開空地、歩道の脇には様々な植物が顔を覗かせる。せわしなく人が行き来する街にも季節ごとに表情を変える植物が共存し、それらに触れることで私たちの暮らしにも異なる時間が流れ込む。
*断片的な物語
編集者、トム・バグスが発した言葉。数万人が日々働くこの町では毎日数えきれない小さなエピソードが堆積されている。その断片的な物語と、私たちは街を移動しながら一瞬だけすれ違うことができる。
*分解し還る記憶
ビルの屋上のビオトープには、実は豊かな植栽が育っている。土は、植物が育って枯れ、それを微生物が分解することで、土へと還って積層していくもの。私たちとは異なる次元の記憶の連鎖が、この街にはあると、プランツディレクター鎌田美希子の言葉。
*私の目線の高さ
車椅子ユーザーであるナビゲーターのライラ・カセムとの対話からの言葉。男性・女性、障がい者、子供、老人など多様な人々の数だけある目線の位置から街を見る。他者の視点を想像することが、街を豊かにする。
*聞いている音 聞こえない音 聞こえている音
複数のナビゲーターが口にした「音がしない」という言葉。しかし実際は都市のノイズで溢れているはずだが、シャットアウトしている音を自分で選んでいるため、音は聞いている/聞こえているはずなのに、聞こえない。
*こっちの道を歩きたい
丸の内・有楽町エリアの縁石や歩道はさまざまな素材のパッチワークのよう。こだわりのレンガもあれば味気ない舗装道路もある。人は歩く時、無意識的にそのテクスチャーや高さで、歩く道を選んでいる。時として設計側の意図ではない意外な道を歩くこともあり、デザインされているようで自らが「道」を選んでいる。
*誰も通らない道 誰かが植えた花
丸の内の高架下、人気のない場所に枯れた植木鉢があった。車椅子ユーザーであるナビゲーターのライラ・カセムは自身の目線の高さからその植木鉢の存在に気づき、「誰かがここに花を植えたんだね」と言った。普段は通過する街の細部に、誰かの「想い」がそっと置かれている。
*空白のスペースの可能性
イギリス人編集者であるトム・バグスとの対話に出てきた言葉。抜けたテナントや、人通りの少ない通路など、街の中で自然に生まれる空白のスペース。あらかじめ計画的に埋められたコンテンツではな
く、この空白こそが、創造性に溢れた人々がものを作ったり、対話したりと何かが生まれてくる可能性を持っている。
*からだの感覚に耳をすませる
植物学者である鎌田美希子との対話から。空調管理された空間や自分のスケールよりずっと大きい都市空間の中にいることは、意図された快適さの反面、体の声すらミュートになることも。街の中にい
るときの自分の身体感覚にフォーカスすることは、動物としての自分を見失わないための訓練なのかもしれない。

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